書籍紹介

「家づくりを成功させるリアル交渉術」(書籍紹介)

書籍紹介

「家造りを成功させるリアル交渉術」 岩山健一 著

  • 亜紀書房 2011年5月 第一版発行
  • 著者は一級建築士にて、㈱日本建築検査研究所を立ち上げ、欠陥住宅の発生予防とその解決、及び紛争支援に当たっている。
  • 著者は同様の本を他にも執筆しており、アマゾンで著者名で検索すると8冊の本の情報が得られます。内、2020年2月時点で販売されている本は、この本も含め2冊となります。
  • Amazonのレビューでは、「交渉術と書かれているが具体的な交渉方法の記載が少なすぎる」等のことが書かれています。それはその通りです。この本は、家造りにおいて欠陥住宅が日常茶飯事的に発生している事の事実認識と、それを前提とした心構えを持って家を建てる必要性を説いている内容だと思います。

「参考になった内容」

「まず主要構造を決める」

  • 家を建てることを決めたら、まずは主要構造を決める(木造・鉄骨系・鉄筋コンクリート等)。地域特性も加味する必要があり、北海道等の寒冷地では、断熱の面で木造で建てた方が合理的。沖縄等の台風が頻発する地方では、風に強い鉄筋コンクリート造りが求められる。また臨海地域も塩害があるため、鉄骨より木造の方が有利となる。関西から西日本は、どのような構造でも馴染むものと考えられる。
  • 主要構造を決めるのは一般の人にとっては難しい事だが、家の骨格を決める重要な作業であり、自分たちの家を自分たちの意思で建てるのであれば避けられないプロセスなので、本気で考える必要がある。
  • 構造が決まれば業者も絞られる。業者選びは出来る限り客観的な情報を掴む。
  • 疑問にまじめに答えないメーカーとは契約しないこと。
  • 納得できるまで業者を選ぶ。常に新たな疑問点を拾い上げ、その疑問点を解消していく。この作業の繰り返しが何よりも大切なこと。
  • 「営業マンの印象で業者を選ばない」:営業マンは契約を取るのが仕事、感じの良い人を装うもの。客に無礼な対応をする人物は論外だが、営業マンから受ける印象は、良くも悪くも冷静に受け止める。感情的な主観ではなく、自分に合った工法か、見積もりは具体的か、実績はどうか等、客観的な情報を材料とし、後悔の無い判断を。
  • 「自分から予算額は言わない」:予算額は口にしない。最初は「まだ決まっていない」と言うのが無難。一旦口にすると、予算+αの見積もりを出してくる。どうしても言う必要があるときは、実際より3割減の額を伝える。それに加え「見積もり落としなどによる追加工事は一切無いようにお願いする。」と伝える事。
  • 「商談内容はしっかり記録する」:営業マンが言ったことはしっかりメモを取る。日付、場所、時間も書き添えておく。あるいはICレコーダーや動画を撮るのも有り。後で揉めた場合の証拠とする。

「住宅展示場は虚飾のかたまり」

  • 住宅展示場に行くことは、基本的にはお勧めしない。展示場はテレビのセットと同様、住み手の生活感を一切排除した場所だから。モデルハウスに配置された家具や調度品も、たいていは高価なものばかり。皆さんの建てる家はモデルハウスのようにはならない。住宅展示場は浮世離れした別世界、ディズニーランドのアトラクションと同じと思った方が良い。
  • それでも住宅展示場に行っておきたい人は、メーカーや工法を選ぶ目線ではなく、自分が建てる家のイメージを立体的にする機会として利用すると割り切って訪れる事。
  • 同じ展示場で、いくつものメーカーを回らない方が良い。メーカーは違っても、同じ展示場にいる各社の営業マンはたいてい仲が良い。営業マン同士で裏で談合が行われている所もあったりする。

「必要な法律知識」

  • 欠陥住宅が無くならない大きな原因の1つに、消費者を守るための法整備が不十分であることがある。
  • 住宅の最低限の安全性を規定しているのが建築基準法。しかしこの法律には罰則がなく、ザル法と言わざるを得ない。この後、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)」が施工された。しかしこの住宅品確法も残念ながら、消費者の方には向いていない。
  • 住宅品確法は3本の柱から成り立っている。
  • 「瑕疵担保責任の特例」:新築住宅について、基本構造部分について10年間の瑕疵担保責任を義務化。⇒適用されるのは「建てて1年以内の新築住宅」のみ。建売の場合、売れずに1年以上過ぎた物件は新築住宅として扱われず、保証適用外となる。保証の対象も基礎、柱、梁等の「基本構造部分」と「雨水の侵入を防止する部分」に限られている。地盤やその他の施工箇所は保証されない。つまり、あまり役に立たない。
  • 「住宅性能表示の設定」:住宅の性能を第三者機関が客観的に評価する。⇒最も重要な「構造品質」や「施工水準」・「防水」などは、ほとんど項目に含まれていない。項目としては「省エネ性能」や「高齢者への配慮」と言った付加価値的な要素ばかり。しかもこれは任意の制度で、具体的に建物の瑕疵がないかを確認するものでは無く、付加価値的な要素に対し点数を付けるものだと言える。基本構造のチェックが欠落している。
  • 性能評価は民間企業が行うが、ある会社が「耐火等級4」の最も高い等級を付けた建物を検査したが、防火に関する法律が全く守られていない仕上げになっていた。こういういい加減な事を行う性能評価機関がある。
  • 住宅性能表示制度では、省エネ等級は「4」が最高だが、連続して断熱材が張られていなくても「等級4」が取れるのが現実、なぜか? “どの断熱材を使うか?” だけで高い等級が認定される。本来、断熱材は“どう設置するか”の方が重要はなずなのに。
  • 大手ハウスメーカーの多くが、「構造等級3(最高評価)」を取っているとカタログに記載している。しかし実際に検査すると「3」に満たないという状況が、しばしばある。「3」を取るためには鉄骨の肉厚が一定以上必要だが、満たないものがある。これにはカラクリが介在する… 大手ハウスメーカーが評価を依頼する住宅性能評価機構はたいてい、設立時にハウスメーカーから出資を受けている。親会社・子会社の関係、つまりは同じ穴のムジナが検査に来ている… 客観的な検査はまずやっていないだろう。
  • 「住宅紛争処理体制の整備」:第三者機関の判断のもとにトラブルの解決を行う。
  • この住宅品確法は消費者にとって不十分は法律。消費者の方は向いていない。では、欠陥が見つかった場合、現実に何に頼ってどう動けばよいのか?
  • その助けの第一は、民法の規定する「瑕疵担保責任」。施主は業者に対し、瑕疵担保責任を追及できる。
  • 建築基準法はザル法だが、建築基準法には法、令、省令、告示があり、特に告示は品質や性能が細かい数値まで規定された条文となっている。施主の皆さんは、この「告示規定」をしっかり活用してほしい。欠陥住宅かどうかを判断する際には、建築基準法の告示規定に適っているかどうかを判断の物差しにすることはよくある。

「独自工法のまやかし」

  • 会社によっては、独自工法を謳っている所もある。例えば「A工法」という工法を謳っている場合、その工法が一般的な工法と比較して、どう違うのか? どう優れているのか? はっきりさせる事が肝心。
  • 仙台にGという会社があり、その会社のパンフレットには「認可されたSK工法」と記載されていた。一般消費者からすれば、SK工法の具体的な中身は分からないまでも、「きっと優れた工法なのだろう」と思っても不思議ではない。独自工法ということで期待値を煽る。しかし調べた所、SK工法は一般の在来木造工法と何ら変わらない工法であることが分かった。SK工法は、当然の事をあえて誇示しているに過ぎない工法だった。(後日、このG社は倒産した)
  • 大手ハウスメーカーから「自社工法」と言われれば、ほとんどの消費者は大きな疑いはもたないはず。しかし事実として、大手ハウスメーカーが独自工法で建てた家々には、法令違反が少なからず存在している。私(著者)の調査歴では、鉄骨系ハウスメーカーには全て防火上の法令違反が確認されている。施工条件によっては、ハウスメーカーによる「独自工法」が法令違反を生む場合もあるということは、容易には看過できない事象。自動車のリコールを上回る大きな社会問題になってもおかしくないと思われる。

「ALCは断熱材ではない」

  • ALC(軽量気泡コンクリート)を「防水材」と言い張ったり、断熱材として扱っている建設会社がある。消費者を煙に巻くようなこうした姿勢には本当に困ったもの。ALCには気泡が含まれるため、多少の断熱、遮熱性能は期待できる部分はあるが、気泡の中に熱が伝わりきってしまえば、今度は蓄熱してしまうことになり、断熱材どころか逆に熱損失まで発生するようになる。
  • また気泡が吸水するとカビが発生する危険性があり、ALCには表面に防水塗料を塗ることが要求される。
  • ALCの表面は、爪でひっかくだけで傷が付いてしまうほどの硬さしかない。運搬や施工で乱暴に扱われると傷みが発生する。
  • このような気になるデメリットは、質問しても建材メーカーはなかなか答えてくれない場合が多い。それでもしつこく食い下がるなり、インターネットでいろんな情報を集めて検討するなりして、可能な限り自衛策を取ることをお勧めします。

「契約(支払い条件)」

  • 支払い条件は契約のときに決まる。後払いが理想だが、それが無理なら、せめて出来高払いにしてもう様、交渉すべき。
  • 多くの場合、業者は先払いにシフトした支払い形態を要求してくる。そういう時は、「保証人」を立てるよう、依頼してみる。金融の世界では、第三者に保証人になってもらうのが普通であり、会社が潰れたり、経営者が逃げた時には、保証人に責任を負ってもらうようにするという意図。
  • 現実的には、業者側が保証人を立てることはあまりなく、「それは難しいので、お金は後払いで構わない」と、たいていの業者はきっとそいう言ってくると思われる。中には施主側に対し、「保証人を立てろ」と切り返してくる業者もいるかも知れない。その場合は、次のように対応する。「こちらに保証人を立てろと言うなら、御社の占有権を放棄して下さい。」
  • 建築の世界では、建物が完成するまでの工事期間中は、その建物は業者の専有である、という考え方がある。これが占有権。占有権を放棄させることで、どの段階であれトラブルになった際には、即現場から業者を排除できるようにしておいた方が安心が出来る。

「見積もりは詳細まで」

  • 業者は詳細な見積もりをなかなか出さない。実際、ハウスメーカーによっては、「会社の方針なので」、「お客様だけ特別扱いできない」等と言って応じないケースが多々考えられる。だが、出来る限り具体的な見積を出させるべく、交渉する姿勢が大切。
  • 何が見積もりに含まれ、あるいは含まれないかをはっきりさせておくことは、施主にとって業者から得難い言質を取ったと同じ事となる。合計額しか書いていないような見積で契約を交わしてしまうと、その後の打合せにおいて、「ここをこうするには別途お金が必要」等、業者が何食わぬ顔でそんな事を言ってくる可能性が高い。
  • この別途費用がそもそも見積に入っていないことが重大な問題。「見積もりに入っていないから追加」と切り返されて納得してはいけない。見積もりに入っていないことを問題にしなければならない。見積書の費用では、建物がどういう状態になるのか? しっかり具体的に文書に記してもらうことが一番良い。
  • 一言で言えば、「家としての性能が確保できるものは全て含まれている。」という文言を契約書に加えさせることが最善の策。

「図面」

  • 素人の方にも判断がつく設計図面は間取り図くらいかもしれないが、それはそれとして、設計図面は必ずもらっておくこと。確認申請で認可の下りた図面。平面図、立面図、断面図、配置図、構造図、設備図等は最低でも準備してもらい、自分で所持しておかなければならない。また、プレカット図、パネルの割り付け図、アンカーボルトの位置図等、現場の職人に渡すような図面も、できれば一式もらっておきたい所。
  • 顧客から苦情を言われた時、「図面通りにやっている」といった言い訳でやりすごそうとするハウスメーカーも少なくない。そういうとき、事前の図面が物言わぬ反証材料となる。もし現場が図面とは異なる、いい加減な施工になっていれば、図面の味方を知っている人が見れば一目瞭然に分かる。
  • 追い詰められたハウスメーカー側は、「これは図面の間違い」「図面の記載ミス」等と切り返してくるかもしれない。しかし、図面と現場では、どちらが先に存在しているか? 言うまでもないこと。建築士によって作られた正しい図面に基づき、現場で施工に当たる。「現場が正しく、図面が間違い」というのはありえない。仮に図面が間違えているのであれば、施工する前に図面を修正すべき。
  • 著者の検査経験から言っても、図面は問題無くても、現場は問題ありというケースが9割以上を占めているのが実情。確認申請をして認可を受けたら、図面を変更してはならないというのが原則。事前に十分打合せを重ねた上で、確認申請用の図面を出してもらうこと。そして見方の分からない図面については、詳しい説明を要求し、納得しておくことが肝要。

「現場チェックと撮影記録の残し方」

  • 工事が始まったら、現場チェック及び記録作業を是非行ってください。施主自らが建物の建築履歴を確保することで、さまざまなリスクを回避することが出来る。やり方は、ポイントをおさえて撮影するだけ。「広い構図で捉えた写真」と「対象物に絞った写真」を必ずセットにして撮影するのがポイント。2枚1組で撮影する。こうしておけば、建物全体でどの部分のどの箇所を示しているのか、後ですぐに分かる。
  • 基礎部分の鉄筋組み始め、やり終えた頃等、工程別に極力同じ構図で撮影する。スケールを当ててかぶりの厚さや鉄筋の間隔が目で見て分かるようにして各部位を撮っていければ理想。手間はかかるが、記録を残しておけば、あとでプロの検査会社等に見せて問題の有無を判断してもらうこともできる。何より、自分の家が出来ていく様を間近に見て実感できるから、興味深いはず。
  • 現場写真を撮ることに気後れする必要は無い。自分の金で自分の家を建てているのだから。工事の職人の作業の妨げにならない範囲で、堂々と撮影すべき。

「記録術全般」

  • 話し合いの記録はビデオ撮影が効果的。営業マン、設計者、現場監督、業者の人とのやりとりをビデオに収めておくと、いざというとき後で役に立つ。いつ、どこで、誰が、何を話しているかが分かれば十分。いわゆる隠し撮りが良いかもしれない。万が一、我が家が欠陥住宅だった場合、悪徳業者と裁判を戦うためには、非常に役に立つ証拠となる。打ち合わせや施工での大事な局面を極力撮影した方が良い。(撮影が難しければ、ボイスレコーダーという手もあります)
  • 以前、裁判までもつれたある施主は600枚の写真を撮影していた。裁判で証拠として仕えたのは2枚のみだったが、その2枚がとても役に立った。撮影しなければ何も残らない。写真による証拠がゼロだと、業者と戦う武器は少なくなる。
  • また、写真やビデオというビジュアル記録だけでなく、各種打ち合わせの議事録(文書)を業者に書いてもらうことも大事。業者の担当者に言って、毎回書いてもらう。これも要は後で問題になったときのために書類、証拠をのこしておくことに目的がある。それとは別に、いつ、誰が、どういことを言ったというメモを自分でも残しておくことをお勧めする。

「インスペクターは紛争処理までが仕事」

  • インスペクターとは、「建築検査を行う会社、団体、または個人の検査員」ということになる。建築士としての豊富な経験に基づく、客観的な目線で誠実に住宅の検査を行い、常に真実を口にする、それがインスペクターの職務。
  • 筆者の場合は、殆どが一般の消費者からの依頼を受けて検査を行っている。自社の問題点をわざわざ暴いてもらうために、あえて筆者のようなインスペクターを選んで依頼するような業者はなかなかいない。
  • どんな時でも業界、業者とケンカする覚悟を持っていなければ、依頼者の怒りや不安に十分に応えられる仕事は出来ない。「うちは訴訟には関与していない」、「弊社では紛争に発展するような事案は過去にない」等、検査の前からこんなアピールをしている検査会社も存在するが、それは何もしていないという宣言をしているのと同じこと。
  • 施主の不安が高じて依頼が来るような家は、まじめに調査すれば高い確率で建物に問題が見つかる。当然その後は保証や補修、立て直しをめぐり業者と交渉することになり、紛争となれば最終的には裁判になるのが通例。年間何百棟も調査していながら「紛争はひとつもない」というのは自慢でも何でもなく、まじめに仕事をしていない証拠。
  • しばしばインスペクター(建築検査会社)と混同される組織がある。確認検査機関や住宅性能評価機関、住宅保証機構。これらの組織は、インスペクターとはまったく異なるもの。これらの組織は建築業界のために動く組織で、業界から出資を受けている。「うちのじゅうたくは第三者機関に入ってもらっている」等、ハウスメーカーの自社宣伝でこのようなセリフがあるが、その第三者機関とは、これらの組織を指しており、建築手続き上、必要な機関にすぎず、入っていて当然のもの。「第三者機関を入れている」等といった文言は、消費者をだましている可能性もあるから、よく確認することが大事。
  • 建設業界が紹介してくれるインスペクターは、マユツバです。表向きは消費者よりのスタンスを示し、適度な知名度がありながら、実際は検査によって核心を指摘する能力が無い場合が多い。業者寄りのインスペクターには、くれぐれも気を付けて欲しい。

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