お勧めの本、本で得た情報の紹介の4冊目となります。
「ハウスメーカーと官僚がダメにした日本の住宅」
澤田升男(さわだますお)著
ザメディアジョン 2009年11月20日 初版発行
筆者は元々工務店の経営者にて、現在の日本の住宅の問題点を提起した著書が何冊かあります。業界では有名な人のようです。
自分が良いと考える住宅工法の家について広めていく活動を行っているようで、HP等もあります。この本にも後半には説明が記載されていますが、紹介の内容からは省きました。
私が家を建てるに際して、20冊前後の本を読みましたが、この本は考え方においては非常に参考になった本です。私が印象深かった内容の箇所を中心に内容紹介致します。
「日本のいびつな住宅産業」
- ヨーロッパの家づくり:風土と文化を生かした伝統的な工法。風土に適した建物のため何十年も持ちメンテナンスも基本不要。そうした意識が長年重んじられているので町全体に統一感があり人の心を魅了する。住宅は資産価値を認められており、三世代に渡り家を引き継ぎ守る考えが残っている。
- アメリカでは同じ家を3~4回も価値ある金額で売ることが出来る。それくらいしっかりとした家づくりがされ、資産価値として高いmのが提供されている。
- 一方日本では、高度経済成長期から大手ハウスメーカーが提供する住宅が乱立、風土を無視した作りでメンテナンスすることが大前提の…小屋のような住宅が立ち並んでいる… 価値が下がり続ける家に莫大なローンを死ぬまで払い続ける… これが日本の住宅事情。住宅に対する意識は大手ハウスメーカーにより操作され、今では提供されるものをそのまま受け入れていれば安心という意識が完全に植え付けられてしまった。
- 良い住宅の定義(筆者の勧める):「住宅取得後に余分なお金が極力かからない建物」ランニングコストが極力少ない家、メンテナンス費用が極力少ない家が良い良い住宅。
- 日本の住宅の現状:日本の住宅は寿命が26年と言われている。ヨーロッパーでは140年、アメリカでは88年だという統計が出されている。
- 日本の住宅寿命の短い理由は、高温多湿の気候を無視した間取り、工法、材質を用いていることが原因。
- 日本では住宅が産業。日本以外の先進国では住宅を文化として考え、気候や風土に合わせた家づくりをしている。海外の建物は流行があまりない、その土地の風土、気候に合った建て方が昔から受け継がれている。
- 日本の住宅レベルを知る上で、海外へ輸出している日本の住宅資材には何があるか? 考えてみる。実際には便器くらいしかない… 技術大国日本という概念は、建築業界では通用しない。
「住宅工法の問題点」
- 外壁材(サイディング):セメント系(≒コンクリート)の材質。コンクリは熱伝導率が比較的高く、断熱性能が低い。このためエアコンを使う室内との温度差が大きくなり、壁内結露を生む原因となる。
- サイディングはそれ自体に吸水性がある。このため塗装して防水性を持たせてあるが、塗装しなければ、自体の寿命は7~8年しか持たない。⇒メンテナンス(塗装)が必要。
- サイディングを外壁に用いる場合、継ぎ目にシリコンコーキングを使用するが、コーキングも経年劣化するため、打ち換えが必要となる。
- スレート系の瓦:これもセメントに繊維素材を混ぜて薄い板状にしたもので、吸水性があり劣化しやすい。思い屋根(瓦)は地震に弱いという理由で、比較的軽いスレート材質の屋根が多用されたが… これも塗装によるメンテナンスが必要となっている。
- アルミサッシ:熱伝導率が高く気密性が向上、家の中の通風が遮られ、結露を招く原因となる。
- 内装材:工業化製品を使用することで気密性が高くなり通風が遮られるようになった。床は木目プリントのビニール製フィルムを貼った合板床材を使用し、壁や天井はビニール製のクロス、ビニールで通風が遮られ、住宅寿命に影響している。
- 日本で建てられている住宅の多くは、10年前後でメンテナンスが必要となる。リフォーム業界が「10兆円産業」と言われる要因がここにある… 海外にはリフォーム業界は存在しない。官僚と大企業との湯逆が、こういった海外では考えられないような産業を発展させてしまっている… 私(筆者)に言わせれば、僅か10年でメンテナンスが必要とされる住宅は欠陥品だ。
- 建築業は“おいしい”ビジネス:数年で壊れる(メンテナンスが必要な)ものを販売するにもかかわらず、メンテナンスでまたお金がもらえる。車や家電を売っているのと同じ感覚。工業化製品が使用され始めてからの日本では、どこの住宅もメンテナンスだらけ… 住宅はメンテナンスが必要という認識が当たり前になっている…
- これは大手建材メーカーの戦略。いつまでも壊れない材料を使うと、いつか仕事が無くなるので、企業が「10年でメンテナンスは当たり前」という考えて国を洗脳した。海外では日本のように短い期間での外壁や屋根のメンテナンスは必要ない。数千万の買い物をしたのに、数年で数百万のメンテナンス費用が定期的にかかる住宅が、夢のマイホーム、本物の家ではない事に気付いてほしい。
「住宅を建てている業者」
- 住宅を建てる業者は、大きく分けるとハウスメーカーと工務店。明確な規定は無いが、自社工場で軽量鉄骨のプレハブ造りを骨組とした住宅をハウスメーカーと呼ぶ。
- 軽量鉄骨で立てられるプレハブ、住宅以外では選挙事務所、工事現場の事務所や飯場、災害時の仮設住宅等。仮設がプレハブで建てられる一番の理由は安価だから。
- しかしハウスメーカーの住宅は安価ではなく高価。仮設事務所は坪単価10~20万円で済むところ、住宅になると坪単価は60~100万円となる。これはハウスメーカーの利益が高いから。一般的に販売価格の5~6割がハウスメーカーの利益となっている。
- ハウスメーカーの家、手間がかかる部分は地元工務店が請負工事している。お客には坪80万円台の価格を提示しているが、請負の発注金額はかなり低い…
- 現在の住宅業界に問題がある。高価な展示場やパンフレット、有名芸能人を採用したCM、新聞一面の広告、新聞折込チラシ、多くの社員数など、ハウスメーカーの存在自体が経費のかかる形態となっている。
- こうした現象が起きるのは、業者側ばかりでなく、私たち消費者側にも門ぢあがある。テレビCMに影響された業者選定、キャンペーンの値引き額に釣られての契約等、あまりのもハウスメーカーの戦略にはまってしまうユーザーが多いという現実がある。ユーザー、メーカー双方が住宅価格を高騰させる要因を作ってしまっている…
- ハウスメーカーで住宅を建てた場合、これだけでは終わらない。ハウスメーカーで住宅を建てた後は、顧客としてリスト化され、数年は無料点検にて、その後は一般的に有料点検となり、外壁を中心に点検をしてくれる。日本の住宅はわずか10年で外壁が劣化する。つまりハウスメーカーで家を建てた瞬間に、10年後の大事なリフォーム顧客として、メーカーのリストに入るということ。10年~15年周期で、ハウスメーカーからリフォームの見積もりが提示されることとなる…
- 平成20年度のリフォーム売り上げ。2位から9位までがハウスメーカーのリフォーム事業部。大手ハウスメーカーがリフォームしている事自体、あまり知られていないが、現実には莫大な売り上げがハウスメーカーにある。どこかおかしいけれど、これが日本の住宅業界の図式なのです。
「麻痺する感覚」
- 短命な住宅が乱立している日本はリフォーム業界が大盛況… 10年で外壁リフォームが必要なことを当然だと思っていませんか? それは欠陥品のメンテナンスと言った方が適切。欧米では絶対に考えられないこと。身の回りであまりにもこうした現象が多いので、感覚が麻痺しているのです。
- 現在、わずか26年と言われる日本の住宅寿命を延ばすための法律が施工されている。一般に「長期優良住宅」と呼ばれる。しかしこの法律で認可されている家であっても、コーキングを用いるサイディングを使った建物が多く存在する。長期優良住宅に認定された建物は、従来建てられた一般の住宅よりは長持ちするものにはなっているが… しかしそこには何十年もの間に渡って、数年ごとの点検、メンテナンスが義務付けられている。「長持ちするけどメンテナンスは必要」という解釈。それくらいの知識レベル、認識しか住宅に対して持っていないのが日本の官僚の実態。国自体の住宅に関する感覚が麻痺している状態では、建築業界、ユーザーも簡単に麻痺してしまうのは仕方ないのかもしれない。
「良い家の特徴 ~形~」
- コストを抑えて家を造るという観点から。建物の値段を左右するのは家自体の形状が大きく影響する。複雑な形の家ほど建設コストがかかる。費用を抑えるためには正方形に近い形が最も経済的。
- 総2階の死角の家にすることで建設コスト、メンテナンスコストを抑えることが出来る。延べ床面積の割には小さい土地でも建てられるので、土地代も抑えられる。同じ延べ床面積の平屋と比べると、費用は約3割も抑えられる。
「良い家の特徴 ~基礎~・~屋根~」
- 住宅の基礎は、大きく類別すると、布基礎とベタ基礎がある。ベタ基礎をお勧めする。地震の危険性に対し、ベタ基礎の方が有利。
- 屋根の形状:一般的には切妻、片流れ、寄棟、入母屋といったものがあるが、この中でコストやメンテナンスに優れているのは、断然、切妻と片流れ。シンプルな形状の屋根にしたほうが、将来的にも無駄な費用をかけなくて済む。
- 瓦屋根:以前は地震に弱いと言われていた。昔は屋根に土を盛り、その上に瓦を敷く「土井敷(どいぶき)」と呼ばれる工法で作られていたので、屋根自体が重くなり、地震時に倒壊しやすい原因となっていた。現在は土を使わず、直接瓦を釘で留める乾式工法が主流となっているので、以前に比べ屋根荷重は軽くなり、比較的地震にも強くなった。
- 瓦の種類:ヨーロッパのS瓦が南欧風の住宅に使用されているが、焼きの温度が低く強度も弱く、撥水効果もあまり期待できない。寒冷地では瓦の中の水分により凍害を起こす可能性がある。メンテナンスやコスト、耐久性を考慮すると、日本製の瓦を選ぶのが最適。
「良い家の特徴 ~床材・壁材~」
- (本の中では、調湿性、補修性無垢板が勧められています)
「業者選択」
- どこに家づくりを依頼するか? A.ハウスメーカー、B.建築事務所、C.地元工務店の3つのパターンが考えられる。
- Aのハウスメーカーについては、本の趣旨から言ってもあり得ない。ハウスメーカーの利益率は40~60%と言われている(工務店は15~20%)。いかに割に合わない買い物だろうか。金額の大半は広告宣伝費に消えている。多くのハウスメーカーは地元工務店を下請けに家を建てる。それならば最初から工務店に依頼した方がコスト面から見ても得策。
- B.建築事務所への依頼は、建築費が大きい場合にはメリットがある場合もある。目安は住宅価格のみで3,000万以上。但し、格差があり、多くの建築士は木造住宅が苦手。また業界には設計単価なるものが存在し、実際の資材取引金額より高く設定されている。これは設計士やユーザーに実際の取引価格を知られないために存在する。こうした理由から実際の工事価格を知っている設計士は少ない。設計士を選択する場合は、建築会社に勤務経験がある人が望ましい。
- C.工務店:業者格差があるので、選び方も大事。良い工務店の見つけ方の1つは、工事中の現場を見る事。現場の整理整頓に気を配る業者は、仕上がりにも気を配る傾向にある。また雑誌やパンフレット、HPで自社のオリジナル工法を唱える業者も注意が必要。他社との差別化のため、他で開発された工法等を、さも自社開発のように独自のネーミングを付けて価値があるように見せかけ、高値で販売するケースがある。しかし基本的には地元工務店への工事依頼をお勧めしたい。よい工務店を選ぶためには社長に会い、家づくりへの思い等を良く聞いてみることが大事。
「金貸しに金の相談をするな」
- 銀行は、貸出が可能か否かを判断するだけで、その人の人生設計には一切触れない。銀行に行った客が無理なく返済できるかどうかは一切関知しない。銀行は担保を抑えているので、貸出にリスクも少ない。
- 住宅ローンの相談は、お金を貸さないお金の専門家への相談の方がベター。ファイナンシャルプランナーと呼ばれる個人的な資産運用、金融に関する総合的なアドバイスをするプロへの相談も検討されてはどうか?
「書籍について」
発刊から年数が経っており、新品では購入できないようですが、楽天、アマゾン共に中古では販売されています。実は私も家を建てる時に購入した書籍は、半分は古本(中古)で買いました…
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