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「家を建てたくなったら」(書籍紹介)

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  • 著者 丹羽 修(一級建築士)
  • 発行所 WAVE出版
  • 2015年9月7日 第3刷発行

この本は、建築家の方が執筆された本となります。戸建て住宅の建築について、建築家の視点で書かれた本となります。

この本を読んで、私が気になった部分をポイントとして書いてみます。

家の建築を建築家に依頼されようと検討されているのであれば、ご参考になればと思います。

「建築家に頼むとお金がかかる?」

建築家に家を建ててもらう=お金持ちをイメージする人が多い。この思い込みの根拠になっているのが“設計監理料”。設計事務所に住宅設計を依頼すると、工事費とは別にこの費用が発生する。

金額は事務所により異なるが、工事費用の10~15%が目安。この金額が工事費用とは別にかかるので「高い」と感じる人が多い。

ハウスメーカーに依頼しても、誰かが図面を引いているので、設計にかかる費用は発生している。また建築家に頼んだ場合、例えば工務店から上がってきた見積もりが予算オーバーした場合、どうしたら予算カットできるか、満足度を下げずに削減するワザを知っており、それを工務店と交渉することも出来る。

予算をどう使うかを建て主と一緒に考えるのも建築家の仕事のうち。なので一概に「建築家に頼むとお金がかかる」というわけではない。

(masagenの感想:金額は恐らく、「地場の比較的安い工務店 < 建築事務所 < 大手ハウスメーカー」というレベルなのだと思います。)

「建築家に頼むと時間がかかる?」

この疑問については、その通り。筆者の場合、最短9か月、最長3年弱。平均で1年~1年半。時間をある程度かけた方がいい家づくりが出来ると思っている。時間が短いと、建て主の価値観、暮らしの好みをじっくり聞く時間が十分に取れない。その人の潜在的な欲求や言葉に出来ない感覚的なものを見過ごしてしまう。建築家に頼むと時間はかかるが、その時間の中身にはきちんと意味があることを知ってもらいたい。

「こだわりがないと建築家には頼めない?」

建築家に依頼する人=デザインやインテリアにこだわりのある人、そう思っている人は多い。「特に要望は無い」で構わない。自分なりの要望というのは最初から誰もが言語化できているわけではない。ぼんやりとした要望を形にしていくのが建築家の仕事。

本や雑誌では建築家が建てた斬新でスタイリッシュな家であふれている、でもそれは一部の話。建築家は「こんな風に暮らせたらいいな」をいう建て主の「なんとなく」を形にしていくパートナー。そんな風に捉えてもらいたい。

「建つまでのプロセスを経験できるメリット」

1軒の家が出来るまでには何段階もの工程を経て完成に至る。このプロセスを一から経験出来、それが満足度に大きく関わってくる。いろんな業者が家づくりに関わっている様子を見ることが出来る。そういう人との付き合いは、家を建てた後にも続く。何か不具合が起きた時、誰に相談したら良いか分かることもメリット。

(masagenの感想:これは地場の工務店で家を建てても、いろんな業者が関わっていることを知ることは出来ます。大事な事は建築現場に足繁く通って家づくりを良く観察することです。建築事務所だから という話ではないと思います。)

「間取り以前に大事なこと」

ゼロから建てる=目に見えないものをイメージする必用がある。

その家でどんな暮らしがしたいか? どんな家なら心地よいと感じるか? 「暮らし」のイメージを固めることが自分らしい住まいを作る第一歩。「理想の暮らし」のイメージがはっきりしていれば、そこを軸に具体的に考えていくことが出来る。けれど実際にはこの大切なステップをパパッとすませてしまう人が意外と多い。普段から「どんな家に住みたいか?」頭の片隅に置いていると、町で散歩していて参考となる家が見つかったり、思いついたりする。少しずつ住みたい家のイメージを膨らませて欲しい。

何も知識のないところから「住みたい家」をイメージするのは大変。なのでお勧めは、理想を全て書き出してみる事。具体的でもイメージでも構わないので、思いつくこと全てを書き出してみる。この際、予算の事は考えない。

全ての理想を出しきったら優先順位を付ける。

「住みたい家」をイメージする際にヒントになるのが、これまで自分が住んできた歴代の住まい。過去の住環境はその人の現在の暮らしに大きな影響を与えている。

理想を描いたら、それが現実的に自分に合っているのか、イメージ先行で植え付けられた「憧れ」なのか判断していく必要がある。

「将来の変化に対応できる家を」

家は30年、40年経っても朽ちて倒れるということは意外とない。殆どはまだ使えるのに壊されているのが実情。必ずしも耐久性が問題になっているわけではない。こわす理由は「ライフスタイルに合わなくなったから」というものが多い。

将来のことを見据えた作り方をしていれば、家はもっと長持ちする。住みたい家をイメージする時に、少しだけ時間軸も取りいれて欲しい。ほんの少し未来を想像することで変化に対応できる柔軟さを家に持たせておくことができる。

「「現場監理」という大切な仕事」

建築家には大きく2つの大事な仕事がある。一つは設計図面の作成、そしてもう一つ重要なのが「現場監理」。現場監理は書いた図面に沿ってきちんと工事が行われているか、現場に行って確認すること。これは「設計したものに責任を持つ」大切な仕事。

家づくりに関わる工程は30以上もあり、それぞれ専門の職人が入って作業をする。たくさんの職人の力で一軒の家が出来る。職人さんへのリスペクトなくして、絶対にいい家をつくることはできない。建築家は建て主に一番近い存在として、職人さんと建て主の間に入り架け橋の役目も担っている。現場が大事であり、設計者が現場に足を運ぶと必ずいい家ができる。

(masagenの感想:建築家によっては、「現場監理」を殆どしない方もおられるようです。「現場監理」なくして良い家は建たないと思います。この辺は建築家を選ぶ際の重要なポイントだろうと思います。)

「建築家を探すには?」

必ず、会って話してから決める。

建築家を探すときに確実なのは口コミです。その建築家に頼んで家を建てたという知人がいれば、ぜひお宅を見せてもらってください。

まず地域で探してください。自分が建てようと考えている地域にどんな建築家がいるか探します。地元なら地域の風土を知っている強みがあり、土地を買う前ならばエリアの相談も出来る。工事が始まってからも現場に足を運んでもらいやすく、アフターケアの相談も気軽に出来る。工事関係の知り合いの多い可能性もある。

検索サイトで調べることも可能。この事前情報からは、その建築家が得意としている素材やテイスト。デザインもそうだが、「屋根」が大きな判断材料になる。「屋根」は設計者の考えや意図が大きく表れる場所。HPの情報に頼ることなく、実際に会ったり、担当した家を見せてもらったりして目で見て感じたことが一番大切。

家のテイストに加え、その建築家がどんなふうに仕事をするタイプなのかは重要な判断基準となる(打合せ回数、現場訪問頻度、得意な工法や建材、作家性の強弱等)。

住宅は公共施設の設計と比べ予算はぐっと少ないが大きな建物をつくるのと同じくらい手間がかかる。つまり好きでないとできない仕事。なかには仕方なく住宅設計をやっているという建築家もいる。

また、「一級建築士の資格=建築家」ではない。資格はただの「免許」。肩書だけでに依存することのないよう、注意が必要。

「いい建築家と出会うために」

いい建築家とはどういう人か? 住宅設計は効率的な仕事ではない。細かい所まで建て主の要望を汲み取り、なおかつ職人一人一人と付き合わなければ出来ないから。

建築家を選ぶポイントとしては、

  1. 住宅の設計が好き
  2. 何でも話せる雰囲気がある
  3. 分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれる
  4. 質問にしっかり答えてくれる
  5. 施工現場に足を運び、きちんと監理してくれる。

そして一番大事なことは、「私の家」「私の夢」に感心を持ってくれるか ということ。だからこそ会って話をして確認する必用がある。

「建築家に会いに行く」

ぜひ利用したいのが「オープンハウス」(建て主の好意で入居前の家を見学させてもらえる家)。オープンハウスの開催情報は、設計事務所、建築家のHP等に掲載されている。但し工事の進行状況等により、開催1~2週間前に決まるのが普通なので、気に入った建築家がいたら、こまめにチェックする必用がある。オープンハウスは直接話を聞けるチャンスでもある。

事前情報を検討し、依頼したいという建築家を絞り込んだら、メールや電話で連絡をして面談する。住みたい家のイメージがある程度固まっていると、スムースに打合せが出来る。この際、土地は決まってなくて構わない。

最初の面談では、以下のようなことを聞いて確認する。

  1. 土地探しの相談には乗ってもらえるのか? ⇒ 相談に乗る場合が多いが、土地が決まってから設計をうける建築家もいる。個人的には土地探しにも付き合ってくれる人を選んだ方が良いと思う。
  2. 打合せの回数は決まっているのか? ⇒ 対応は事務所により様々。筆者の場合は特に回数制限は設けていない。
  3. 現場監理はきちんと実施してもらえるか? ⇒ 設計事務所によっては設計しか行わない所もある。建物がきちんと形になるまで責任を持ってもらえるか、事前に確認しておくことはとても大切。
  4. 完成後のメンテナンスンスの相談は可能か? ⇒ 工務店任せの人もいるので、念のために確認しておく。
  5. スケジュールについて ⇒ おおまかな流れと完成までの時間を予め確認しておく。
  6. 費用:設計料について ⇒ 設計監理料は基本的に工事費の10~15%前後。事前にその事務所が設定している料金体系を確認しておく。
  7. 費用:支払いタイミング ⇒ 支払いは3~4回に分けるのが一般的。どの時点で支払うのか聞いておく。キャンセル費用についても確認しておく。
  8. 費用:おおまかな予算感 ⇒ その事務所に依頼した場合、工事費の概算を把握しておく。幾つか事例を見せてもらい費用を聞いてみる。相場を知っておくことは大事。

「立地や周辺環境をチェック」

気に入った家を建てたとしても、周辺環境が悪いと理想の暮らしは出来ない。周辺環境は自分の力ではどうにもできないので、事前に確認しておくことが大切。いいなと思う土地を見つけたら実際に自分の足で歩いてみる。その際気を付けるポイントについて。

  1. 最寄り駅(バス停)までのルート:駅を降りて、その土地までの最短ルートを歩く。昼間だけでなく夜も歩いてみる。暗い所、危険な所は無いか確認する。
  2. 隣接地の環境:駐車場や空き地、工場が隣接している場合は要注意。将来的にマンション等の高い建物が建つ可能性がある。
  3. 周辺施設や道路:敷地の周辺をぶらぶら歩いて、音や臭いの出そうな工場等が無いか確認する。近くに幹線道路がある場合、騒音、排気ガス、粉塵、振動等の影響が考えられる。
  4. 地盤の状況:近くに川や崖があるときは洪水やがけ崩れの被害も想定される。事前に自治体のハザードマップを確認しておく。また以前その土地にどんな建物があったかも調べておく。管轄の法務局に行けば、土地の履歴が記載された登記簿を閲覧できる。(masagenの感想:Googleストリートビュー、Googleマップでも、以前の状態が見れる場合があります。私もそれで確認しました。)
  5. 近隣の声を聞く:近隣に実際に住んでいる人に話を聞くのが確実。
  6. 学区も調べてみる:同じ市内の公立の小学校、中学校でも、学区により児童数、環境、子供たちの雰囲気が全然違う。学区の小中学校の情報を調べることも大事。通学路を歩いてみる等、事前に確認してみるとよい。

「間取り・収納」

「一応」をやめる:間取り図を相談中に建て主の口から良く出てくるのが「一応」の言葉。「一応、和室を作っておく」、「一応、納戸をつくっておく」。念のためという気持ちはわかるがこれがクセモノ。住む人によっては全く必要がないのに「一応」と考えてしまう要素がたくさんある(二つ目のトイレ、来客用駐車場、食洗器、塀、収納のトビラ 等)。多くの人は限られたスペースと予算の中で間取りを検討する。その費用やスペースが「一応」にもっていかれるのはもったいない。本当に必要か? よく考えてみる必要がある。

思い込みを捨てる:家づくりは思い込みに支配されがち。自分の暮らしにあった家を作りたいならば、次のように思い込みや既成概念に反論してみる。

  • 部屋数は多いほど良い:使わない部屋が出てきてしまうのでは?
  • 東南角部屋は子供部屋に:日中、子供は学校に行くし、快適にしすぎて部屋にこもりすぎりのもいかがなものか。
  • 天井は高いほど良い:天井が低い部屋は心が落ち着くのでは?
  • どの部屋も最低6畳はほしい:メリハリをつけた方が使い勝手が良いのでは?
  • トイレは各階に必要:費用も倍、掃除も倍になる
  • 駐車場に屋根は必要:毎日使うのが自転車の場合、駐輪場に屋根をつけた方が便利な場合もある。

良い家は、住む人によって全く違う。家づくりの本には「間取りはこうしなさい」というルールがいろいろと書かれている。参考になることは取りいれたらよいが、本は絶対ではない。

「屋根について」

日本の気候風土が培ってきた住まいの知恵、それは屋根によく表れている。ヨーロッパは「壁の建築」といわれるのに対し、日本は「屋根の建築」といわれるほど。

太陽の角度を考慮して屋根の長さをきちんと算出すれば、夏は直射日光をカットし、冬は室内に日差しを取り入れることもできる。

最近では庇や軒のない箱型の家が増えている。このような家は雨の日に傘を差さずにいるようなもの。屋根が大きく軒が深ければ、雨が部屋の中まで吹き込まない。雨の日でも窓を開けて風通しを良くすることが出来る。

屋根には雨による傷や痛みから外壁を守るという大きな役割がある。屋根は日本の家にとって非常に重要なものだが、建て主から屋根に対してリクエストされることは滅多にない(断熱材への要望は多いが)。屋根をはじめとした根本的な家の作り方から、住み心地の良さを考えてほしいと思う。

「断熱材や冷暖房を考える前に」

「外断熱で家を建てたい」という建て主は少なからずいる。でも良い断熱材を使っても、それだけでは暖かくはならない。断熱材=室温を保つのに効果を発揮するが、熱源が無い限り部屋は暖かくならない。

  1.  家の作り方で夏涼しく、冬暖かい設計にする
  2.  断熱材で外の熱を遮断、保温する
  3.  冷暖房設備で調節する

この順番が大事。断熱材の前にまず、「家の作り方」により自然環境を生かすことを検討すべき。その上で足りないところを断熱と冷暖房で補うという順序で考える。

「内と外の境界の意識」

日本家屋には縁側という独特の空間がある。夏の直射日光を避けるため軒を深くし、結果生まれた空間を利用したのが縁側。日本の家はこのように「内」でも「外」でもない半屋外の曖昧な領域を通して自然を部屋の中に取り込んできた。

対してヨーロッパの街並みは建物の外壁がすに通りに面している。外壁を隔てて「内」と「外」の境界線がはっきりしている。

家というのは壁に囲まれた屋内空間だけを指すものではない。外部空間、半外部空間を通じて、どう街や自然とつながるのか、そこを含めて住まいの心地よさを考えたい。

周囲に開かれた家が良い理由の一つが防犯性。外から中の様子が見えない家は泥棒に狙われやすい。高い塀や壁に囲まれた家は、いったん塀を超えて中に入れば、泥棒にとって仕事しやすい環境となる。

「建物の値段のガイドライン」

注文住宅の購入資金は平均4,017万円。自己資本率は34%(1,367万円)。ローンの年間返済額は113.1万円、年収に占める返済負債率は20.5%(平成25年度住宅市場動向調査より)。この金額は土地込みなので地域により開きはある。

建て主から提示される予算額で多いのは、2,000万円。

「修繕積立について」

住み始めた後に必ず考えておいてほしいお金がメンテナンス費用。筆者のお勧めは、月1万円の積み立て。マンションの管理費に対し少ないが、年間12万円×10年で120万円。この金額で屋根と外壁は全て塗りなおせる。少しずつでも良いのでコツコツと積み立てておいて下さい。

「この本を読んでの感想」

  • ここに紹介した以外にも、設計士ならではの間取りや植栽、設計等の工夫についての記事が幾つもあり、参考になると思います(画像等が紹介出来ないので、残念ながら割愛しました)。
  • 筆者のような建築家であれば、家の建築の相談をするのは良いかなと思います。こだわりだったり、思い入れや理想がある方は、建築家への相談は選択肢に入れるべきかも知れません。
  • ただ、私もそうでしたが低予算の場合は、建築家、設計事務所への相談はハードルが高そうな気がします。
  • この本は建築家の視点そのものから書かれた本であり、家づくりにおいてはとても参考になると思います。

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