考え方構造・工法

家の工法における正反対の考え方

考え方

今の戸建て住宅で最も多い構造は、在来軸組工法です。在来軸組工法で家を建てる場合、各建築資材の選択において、それぞれにメリット、デメリットはあります。

また在来軸組工法においては部分的にいろんな工法があるのですが、工務店により採用している工法が異なります。そして、そのメリット、デメリットが説明されているのですが、これとは真逆に近い施工方法のものも存在します。つまり主張が正反対に近いものなのです。この辺も、どのように家を建てるのか? 検討する中で、決めるのが難しくなっている原因なのかも知れません。

「内断熱・外断熱」

  • 外断熱は元々、鉄筋コンクリート造りの家にて採用される断熱工法とのことです。→鉄筋コンクリートは自体の断熱性が比較的低く、内部には断熱材が入れられないため、必然的に外断熱となる。
  • 木造(在来軸組工法)の場合、壁内に元々隙間があり、ここに断熱材を入れる形での内断熱が主流です。最近は高性能を標榜する外断熱仕様の家の情報も良く見かけます。
  • 内断熱と外断熱が正反対の工法 となるわけではありませんが、いずれかを選択する必要があります。内断熱、外断熱それぞれに幾つかの工法が存在しますので、それぞれの工法のメリット、デメリットを考慮して選定する必要があります。
  • 価格的には外断熱の方が高い傾向にあるようです。性能面ではどうなんでしょうね? なかなか同じ条件で断熱材だけ変えて比較するというのも難しいので…
(内か外か?)

「断熱材」

  • 断熱材にはいろんな種類がありますが、価格も安くて高性能なグラスウールが多用されています。このため、他の断熱材は、その性能の優位性をグラスウールとの比較で訴えているものが多い様に思います。
  • グラスウールにかかるネット上の記事は多くありますが、中にはズバリ「グラスウールは使ってはいけない」的な内容の記事もあります。
  • グラスウールに否定的な記事に書かれてある内容としては、①断熱性能に劣る、②内部結露が起こりやすい、③施工不良が多い、④(アスベストを例に出し)身体に悪い 等の事が挙げられています。特に良く書かれている内容としては、②の内部結露が起こるという内容のものです。
  • これらの意見に対し、別のサイトでは、数字を示して否定しているサイトがあります。最も良いのは、監督官庁なりが客観的に評価することなのでしょうが、この辺は自由競争社会である関係上、むやみに官庁が立ち入ることはありませんので、客観的な判断というのは現時点では存在しないと思います。
  • ただ、グラスウールに明確な不具合があれば、多用されている状況下、ある程度の問題となるはずですが、そのような話も無く、つまりはグラスウールに大きな問題があるとは考えにくいと思います。私の家の断熱もグラスウールです。
  • どんな断熱材を採用しても、大事なのは施工方法だと思います。施工方法上の問題が最も懸念されるべきものであり、断熱材の種類は大きな不具合要因とはならないと思います。

「床下換気」

  • 家の基礎は布基礎とベタ基礎がありますが、ベタ基礎の方が主流になっています。
  • 昔から床下はカビ等の湿気対策(≒シロアリ対策)もあり、通気させる工法での施工が主流です。昔は基礎の一部を格子状にし、家の基礎の四方面に格子状部分(換気口)
    を配置していました(この施工方法は今でも行う工務店もあります)。
  • 現在主流となっているのは、基礎土台の上にパッキンを置く土台パッキン工法です。パッキンの厚みは10mm、12mmのものがあります。パッキンとパッキンの間に隙間があり、この隙間で床下を換気する構造となります。基礎に換気口を設けないため、基礎の強度が上がるメリットがあり、また開口面積は換気口よりも多いため、換気量が多いと言われています。
  • たた、これでも換気量としては不充分とする意見もあり、床下も強制吸排気が必要と考え、換気扇を設置する場合もあります。床下換気用の換気扇も販売されています。
  • 他方、床下を換気することで、特に冬場の床の断熱が損なわれるとの考えより、床下換気を一切行わず、床下には砂利等を詰めてしまう工法もあります。ユニバーサルホームという会社は、この方法を採用しています。床下に隙間を作らない事により、湿気を溜め込まない、床下浸水が無い事を標榜しています。
  • いずれにしろ、「床下換気工法」に対し、床下を埋めてしまうという、正反対の工法が存在しています。家の注文を依頼する際の決め手までにはならないかも知れませんが、正反対の考えが存在している状況となります。
換気口のある基礎

「軒の出幅」

  • 軒(のき)=屋根の部分のことで、家の外壁よりも突き出ている屋根部分、でっぱり部分のことです。庇(ひさし)は、家の窓や扉の上に部分的に取り付ける、小さな屋根です。
  • 昔ながらの日本家屋の考えは、夏をいかに涼しく過ごすか? に重きが置かれていたようです。これは日本の気候が特に夏場、高温多湿になる事が背景にあります。このため、軒や庇を長く取り、夏場の直射日光を避ける構造となっています。
  • 軒が屋根から大きく出ていると、夏場の直射日光を避けることが出来ます。また雨が直接壁に当たる量も減らすことが出来ます。この事より、住む人の快適性と、また日光や雨による壁への影響を減らす事で、壁の耐久性を上げる事にもつながります。
  • 他方、最近建てられている家は、軒や庇が全く無い家も多く見受けられます。これは、デザイン性、及び材料費を抑えるメリットのためだと思われます。但し、軒や庇の設置目的から見ると、真逆の施工方法となります。
  • 家の外観、デザインも大事ですが、やはり家は住む人が快適に暮らせるためのものであり、長く使えるという耐久性も大事である事から考えると、軒や庇は大きく張り出した家の方が、良い様に思います。

「集成材、無垢材」

  • 無垢材とは、1本の木から作られる木材です。木材を既定の寸法に削ったものとなります。
  • これに対し集成材とは、「製材された板、あるいは小角材などを乾燥し、節や割れ等の欠点部分を除去し、繊維方向を揃えて接着剤で作る木質材料」 となっています。
  • 特にこの2つの材料が、正反対のもの というわけではありません。それぞれにメリット、デメリットがあります。
  • 無機材の場合、自然な風合いが魅力です。デメリットとしては、木は品質に差があり、伸び縮みや反りが発生する場合がある事となります。
  • 集成材のメリットは、品質が安定しているということです。デメリットは、集成材が作られるようになってからの年数が浅いため、長期的な耐久性のデータが無いという事です。実際には接着剤の耐久性が未知数ということになります。
  • 集成材、無垢材は木造家屋における主要な材料なのですが、どの部材にどちらの木材を選択するか? という事に対する意見がネットの記事を見る限り、分かれているのが実情です。「無垢材が良い」という意見もあれば、「品質が安定している集成材を使うべき」という意見もあります。これは家を建てる工務店によっても考え方が違い、独自の考えで材料を選択しています。
  • どちらの材料でも大きな問題は無いとは思うのですが、家を建てるに際し、木材についてこだわりがあるのであれば、請負の工務店には事前に、材木の選択について確認された方が良いと思います。特に珍しい材木でない限りは、基本的に「無垢材で建てたい」、「集成材を使いたい」という希望は聞いてくれると思います。
集成材で作られたテーブル

「エアコン通し穴」

  • これは別の記事にも書きましたが、エアコン配管の通し穴を家の施工時に開けておくか? エアコン設置時に開けるか? という話です。
  • 鉄筋コンクリート造りのアパート、マンション等の場合は、後から穴あけ加工するのは手間がかかるので、新築時に各部屋にエアコン通し穴が設置されている場合が多いと思います。
  • また、木造戸建てであっても、高気密、高断熱を標榜する外断熱仕様の家では、施工時に予めエアコン通し穴を作っている工務店もあります。
  • これに対し、一般の木造戸建て住宅の場合は、エアコン通し穴は無く、エアコン設置時に壁に穴を開ける場合が多いようです。
  • 家の施工時にエアコン通し穴を開けておくメリットは、エアコン設置時に筋交い等を傷つけるリスクが無いこと、設置場所に迷わないことです。デメリットとしては、エアコンは機種により形が異なるので、設置機種、場所により室内の配管が外に出てしまう場合があることです。
  • エアコン設置時に壁に穴を開ける場合のメリットは、配管レイアウトに都合の良い場所に穴を開けるため、配管の収まりが良くなることです。デメリットは、施工業者の力量が低いと、筋交い等に傷を付けてしまう場合があることです
  • 私の家も、子供部屋にエアコンを設置した際、業者の施工が悪く、筋交いを破損させています。(これについては無償で別の場所に再設置工事をしてもらい、及び破損した筋交いは内壁を剥がして入れ替えさせました)。
  • エアコン設置時の余計な心配を無くしたいのであれば、エアコン通し穴は家の施工時に作ってもらっておいた方が無難です。
  • 新たに壁に穴を開けてエアコンを設置する場合は、①エアコン購入時に「筋交いを破損させたら弁済させる」旨、伝えておき、②予め設置予定箇所の壁の筋交い位置を把握し、工事業者に説明しておく 事をお勧めします。

「土地が先か家が先か?」

  • これは家を建てる際に、大きく迷うかも知れません。一般的には土地を決めて、その後その土地にあう家を造るというのが多い様に思います。
  • 戸建て住宅関係の書籍を読むと、その本の作者の立場により意見が変わるのですが、家を施工する側の作者の場合は、「先に住みたい家の仕様を決めてから、土地を探すべき」という意見のものが複数あります。
  • 土地を先に探した場合、どうしても利便性の良い所を選ぶ場合が多く、土地の購入費用は当初の思惑よりも高くなる、このため家にかけられる費用が少なくなり、結果当初希望していた家に住めなくなり後悔する、であれば先に家の仕様を決め、その家の仕様にあう土地を探すべき というのが、だいたい似通った主張となっています。
  • これに対し、「先に土地を決めるべき、まずは住環境が大事。土地の形によっては家の仕様も変える必要があり、土地を決めてから家の仕様を考えるべき」という意見もあります。もうこれは真逆の意見となります。
  • ここは家づくりの考えで、最初にしっかりした考えを持っておくべき所なのだと思います。簡単なことで、まずは自分がどちらを優先するのか? だと思います。「その土地に住みたいのか?」、「その家に住みたいのか?」 土地環境、住環境どちらを優先するのか?
  • また、家づくりに際し予算を厳格に決めておくことも肝要かと思います。「総額予算は〇〇円、土地は〇〇円、家は〇〇円」そして、この予算を絶対に超えない範囲で検討する事が大事です。「どうせ大きな出費だから」「ローンが組めるから」と予算オーバーOKとしても、負債が増え負担が増えるだけです。
  • 明確に「こういう家に住みたい」という希望があるのであれば、まず工務店に行って家の仕様を決め、同時進行で工務店に土地探しを依頼するのが良いかと思います。
  • そうでない場合は、土地環境を優先すべきと考えます。通勤や通学距離、時間、病院やスーパー等の日常に欠かせない施設までの距離は大事です。私は先ずは「何処に住みたいか?」を考えるべきだと思います。
  • 土地の形により、家の設計は変わります。またその土地固有の環境(騒音面や隣の家との距離、関係性なり、風通し等)を考慮した家の設計も大事です。そういう意味でも、私は土地を先に決めた方が良いのかなと思っています。

「外壁通気工法」

  • 「木造住宅の外壁の中は、室内からの湿気が入り込んだり、あるいは断熱材の欠損があると壁内結露(内部結露)を起こす可能性が高いとされている。」と言われています。このため、これを改善する手段として「外壁通気工法」があります。
  • 特に外壁にサイディングを使用する場合は、この工法にて施工されます。この工法は、まず家の外側一面に透湿防水シートと呼ばれるシートを貼り、その上から胴縁と呼ばれる板材を、空気の通り道を考えて取り付け、この胴縁(板材)にサイディングを引っ掛けるように施工していきます(まあなかなか文章だけでは分かり難いですよね…)。
  • 要は、外壁(サイディング)の下に、数センチの隙間部分を設け、ここを通気層としている工法となります。窯業系サイディングの場合、この通気工法が標準工法となっています。
  • 窯業系サイディングは、現在7割の住宅が採用している外壁材のため、不具合も顕在化しやすいと思われ、2000年以降は外気通期工法が標準工法となっています。
  • これに対し、他の外壁材(モルタル塗り壁、板張)等の場合、通気工法が標準工法とはなっていないと思います。このため、窯業系サイディング以外の外壁材を使用する場合には、施工方法、通気について事前に工務店と相談された方が良いと思います。

「2×4」高温多湿・コスト

  • 「ツーバイフォーは湿気に弱い」との記事を見たことがあります。このため、ツーバイフォーと湿度について検索してみましたが、特段気になるような記事はなく、湿度に弱いというデメリットは無い様に思います。
  • 恐らくツーバイフォーは海外で規格化された家の製法なので、日本に入ってきた当初は輸入材でそのまま家を建てていたのだろうと考えられます、ツーバーフォーは世界各国で採用されている工法なのですが、輸入した材料は恐らく、アメリカの乾燥した地域(カリフォルニア等)から輸入した材料であったため、日本に入ってきた当初、木材が元々湿度に弱かったため、このような風評が出たのだろうと推察します。
  • 実際には、世界各国、各地域の気候特性に併せた材木を使用することにより、その地域への気候耐性を持たせた家づくりとなっているため、ツーバイフォーだから日本の気候には合わないという事は無いだろうと思います。それよりはやはり、施工技術の方が家の品質に直結すると考えます。
  • ツーバイフォーについての情報をネットで探していて、ツーバイフォーで家を建てられた方のブログがありました。「ツーバイフォーは合理性を追求した最もコストパフォーマンスの高い工法。安く買える規格化された材料を使い、組み立てに熟練の技を必要とせず、構造にかける費用を抑えられる。それでいて、経験が蓄積された仕様に準拠することで、高い耐震性、耐火性、気密性、断熱性を得ることができる。」と書かれてありました。確かに世界各国でも採用されている工法なので、そう言えると思います。しかし、対応できる工務店が少なく、「大手のハウスメーカーは大抵、ツーバイフォーの利点であるはずのコストパフォーマンスを無視しており、構造に費用がかからない分を安くするのではなく、デザインや空調、過剰なサービスなどにお金をかけてしまっている。」とも書かれてありました。つまり、本来の利点が正反対のデメリットとなっている実情が垣間見えたような気がしました。

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