構造・工法

「木造住宅の耐用年数を考えてみました」

構造・工法

巷には、「100年住宅」という会社があり、PC(プレキャストコンクリート)で作られた家は、100年の耐用年数を標榜しています。私は、ブログのタイトルにもなっていますが、「木の家がおすすめ!」というのが自分なりの考え方です。その木の家、耐用年数はどうなのでしょう?

どんな家でも、メンテナンスや修理無しでは長期間の維持は無理でしょうが、耐用年数に影響するものは何か? 考えてみました。

「木造住宅の耐用年数」

何気なく、“木造住宅”、“耐用年数”で検索してみると、「22年」という数字が出てきました! これは資産にかかる法定耐用年数とのことで、木造の場合、簡単に言えば、22年で資産価値が0円となる ということのようです。⇒ 法定耐用年数 パソコンは4年、自動車は6年と書かれてあります。

これに対し、建築現場にて使われる考え方に、「物理的耐用年数」という言葉があるそうです。言葉の定義としては、「建物躯体や構成材が物理的あるいは化学的原因により劣化し、要求される限界性能を下回る年数」となっています。

なので、ここで言う耐用年数としては、物理的耐用年数の事となります。

研究により異なりますが、木造では物理的耐用年数は65年というデータもあります(2011年の調査における平均寿命)。

「木造住宅 耐用年数30年?」

私も、この30年という数字は、どこかで見たことがあります。少し調べてみた所、この数字の出所としては、以下の事が考えられるそうです。

  • 統計によるデータ:取り壊した建物の築年数が27年だったことを反映した年数。都市計画による取り壊しも含まれる。
  • 一般的にキッチン、浴室などの水回りの設備は20~30年が交換目安とも言われている。

「木造住宅の寿命への影響」

何を以て寿命とするか? この考え方ですが、人に例えた場合には「致命傷を負わないこと」になると思います。木造住宅の場合の致命傷は?

これは、構造躯体、主要構造部分に問題が無い事 と考えて良いのではと思います。

構造躯体≒骨組みに当たる部分のこと。基礎、土台、壁、柱、屋根 等がそれとなります。

特に、基礎、土台、柱、屋根 が要なのかなと思います。

木造の場合、これらの重要な部分に致命傷を負わせる原因としては、自然災害を除いて考えた場合、やはり“雨漏り”と“シロアリ”が2大リスクなのだろうと思います。まずは、この2つをどう避けるか? が重要だと思います。

「シロアリについて」

元々は土の中に生息しています。

羽アリの群飛時期は、ヤマトリロアリが4月下旬~5月の昼間、イエシロアリが5~7月の夕方~夜となっています。

家の基礎は主に布基礎とベタ基礎がありますが、一面にコンクリートを設置するベタ基礎の方が、シロアリの食害には強いと言われています。ただ、ベタ基礎だから安心というわけではなく、ベタ基礎であってもシロアリの害は発生しています。

なので、大事な事は定期的な床下の点検、薬剤処理になります。

薬剤の場合、有効期間は5年間と言われていますので、薬剤処理をするのであれば、5年毎に実施が必要です。

昔は薬剤にヒ素が使われており、一度施工すれば、二度の施工が不要だったようですが、1986年に法改正によりヒ素の使用が禁止された事より、薬剤効果が弱くなったようです。

「雨漏りについて」

屋根材(瓦や鋼板、スレート等)自体の劣化(割れ、耐水性の劣化)による雨漏りの場合は、部分、全体的な屋根材の補修や交換が必要です。粘土瓦は耐久性が高く、地震や台風等による割れや剥がれ、隙間の発生が無ければ、自体の劣化による雨漏りの発生可能性は低いと考えられます。

施工実績の多いスレート屋根は、デザイン性が高く軽量なので地震にも有利なのですが、耐久性に劣り塗装が必要です。塗装しないと防水性能が無くなるため、雨漏りの原因となる可能性があります。

また、屋根において大事な役割を果たしているのがルーフィングです。屋根材の下地として屋根一面に貼られており、防水層の役目を果たしています。

屋根は、屋根材とルーフィングによって防水性能を発揮しており、雨漏りが発生した場合には、恐らくルーフィングの機能が損なわれている可能性も考えられます。

このルーフィングにはいくつも種類があり、品質重視のものは耐久性も長く(50年以上)、家の設計時にはルーフィングの種類も良く調べた上で選定、指定されることをお勧め致します。(私はそこまで気が回らず、家を建てた後に後悔している点です)

田島ルーフィングの(商品名)マスタールーフィングは、耐久性が60年程度と謳われています。

「構造用合板」

現在の木造住宅において、構造用合板は家の部材として多用されています。一般的には床材、屋根の野地板が構造用合板が用いられています(野地板には12mm、床板には24mmの構造用合板が用いられることが多い)。

また、場合によっては家の強度を持たせるために、壁(外側)一面に構造用合板を貼る場合もあります(私の家はそうなっています)。

この構造用合板はJASで品質規格が定められており、それなりの品質が保証されています。また接着剤が使われているので、無垢材よりもシロアリの食害には強いとされています。

この構造用合板の寿命について、Wikipediaには、「少なくとも20 – 30年程度は問題ないとされている。しかし、規格が定まってからの使用実績の期間が長くないため、何十年までなら十分な強度を保てるか、実績を根拠とした超長期の保証はなされていない。乾燥した環境であれば、終戦直後に建設された、耐水性の低いユリア系接着剤を用いた合板による木造建造物であっても、健全な状態で残っているのに対し、高湿度の環境では耐水性の高い材料を用いたものでも早く劣化する。」と記載されています。30年は持つものと思われ、湿度の低い環境であれば、さらに耐用年数は長いと考えています。

「金物(かなもの)」

昔の木造家屋は、釘や金物を使わずに、木の継手の組み合わせで家を組み立てていました。今は利便性、手間の面で、継ぎ手部分については金物で補強して家を組み立てるのが主流となっています。

この金物は名前の通り金属製です。今の木造家屋は、この金物を使用しているため、金物の耐用年数が低く、家の寿命が短くなると書かれたものを見たことがあります(何に書いてあったのか、覚えていませんが…)

そこで、この金物について調べてみました。

現在、一般的に使用されている金物は、「Zマーク金物」、「Zマーク表示金物」が多いと思います。このZマークとは、「木造軸組工法(在来工法)を対象に「財団法人日本住宅・木材技術センター」が数々の強度検査基準をクリアーされ承認された金物」とのこと。亜鉛メッキされているため、それなりに腐食に強く、耐久性もあると思われます。

ただ、このZマーク金物の耐久性を示す記事、データは見つけることが出来ませんでした…

ネットで「金物」を調べてみると、より高耐久を謳った商品を幾つか見つけることが出来ます。家の長期耐久性を望む場合、これらの高耐久を謳った金物を選択する方法もあります。但し、工務店は通常使用している金物と施工方法が違う場合に、使用について難色を示す場合がありますので、工務店の方と良く相談されることをお勧め致します。少なくとも、金物については「Zマーク金物」であることは最低条件だと思いますので、金物にこだわりがなくても、この点は事前に確認されることをお勧め致します。

「基礎の耐用年数」

木造住宅の基礎は現在、ベタ基礎が主流です。このベタ基礎は、鉄筋コンクリートにて作られています。

基礎の耐用年数=鉄筋コンクリートの耐用年数となります。そして鉄筋コンクリートの寿命は、中に入っている鉄筋の腐食劣化により決まります。

コンクリートは元々アルカリ性の性質を持ちます。これが経時的に徐々に中性化していきます。コンクリートの中性化領域が鉄筋に達し、約20%が腐食した状態が、鉄筋コンクリートの寿命と考えられているそうです。

コンクリートの強度は、水とセメントの割合で決まります。そして水の割合が少なくなるほど強度が増します。この強度を表す数字として、18N、24N等の数字が用いられます。

18Nとは、18N/mm2の単位で表され、1mm×1mmの面積が1.8kgに耐えられるという意味です。平方mに直すと、1.8tになります。

このコンクリートの強度基準により、耐久年数が数値化されています。

計画供用期間 耐久設計基準強度 供用限界期間
短期 およそ30年 18N/mm2 およそ65年 
  47.5年 21N/mm2 82.5年
標準 およそ65年 24N/mm2 およそ100年
  82.5年 27N/mm2 150年
長期 およそ100年 30N/mm2 およそ200年
  150年 33N/mm2

一般的には、21N、24Nのコンクリートが用いられていると思います。コンクリートは水分比率が多い方が施工性は良くなります。基礎コンクリートの強度については、工務店側から説明することは少ないと思われ、事前に確認されておくことをお勧め致します。

「家の耐久性、寿命を上げるために」

私は家を建てた時の自分の年齢から、長生きした場合、この家に50年くらいは住めるんだなあと、家の使用期間を想定しています。なので、少なくとも50年は大きな補修もなく住める家であってほしいと考えています。

実際に自分の建てる家について、使用期間を想定されている方は少数派なのかも知れませんが、「長く住みたい」、「60年、80年、100年間住みたい」等と考えられている場合には、設計時にその辺も考慮した家づくりが大事になってきます。そのためには、

「基礎について」

  •  使用するコンクリートの強度の検討:24N以上
  • コンクリートのかぶり厚の確認(これはここでは説明していませんので、調べてみて下さい)

「金物について」

  • (最低でも)Zマーク金具であることの確認
  • より耐久性の高い金物の選定、使用の検討(工務店と要相談)

「屋根について」

  • 粘土瓦の選択が無難と思います
  • ルーフィングについて、高品質のルーフィングを選択する

この辺の事前考慮、検討は大事かと思います。

その上で、家の建築後はシロアリ対策も大事です。

「シロアリ対策」

  • 家の建築時に防蟻施工の実施
  • 年に1回程度、床下の点検
  • 5年毎の薬剤施工の実施

これらのメンテナンスをご検討されることをお勧め致します。

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