注文住宅(木造)で家を建てる場合に、一番難しいのが外壁選びだと思います。
日本の家は、家の構造から始まって、各部分の材料に至るまで、いろんな選択肢があります。それぞれに特徴、メリット、デメリットがあるのですが、外壁材に関して言えば、耐久性に優れ、且つそれほど費用的に高くないもの が無いのです。なので、真剣に選べば選ぶほど、悩むのではないか? と思います。私も一番悩んだのが外壁材でした。
この外壁材について、書いてみたいと思います。
「外壁材の種類」
外壁材も、いろんな種類があります。
- 窯業系サイディング
- 金属サイディング(鉄:ガルバリウム鋼板)
- 金属サイディング(アルミニウム)
- 樹脂サイディング(塩ビ:ポリマパネル)
- 木質系サイディング
- 焼杉
- 塗り壁(しっくい)
- 塗り壁(コンクリート)
- タイル
- ALC
次に、それぞれの外壁材の特徴(メリット、デメリット)について
「窯業系サイディング」
現在主流の外壁材です(シェア75%以上)。大半のハウスメーカー、工務店において、標準の外壁材は窯業系サイディングだと思います。つまり家を建てる際に、特に指定しなければ、窯業系サイディングのカタログを渡されて、「この中から好きな柄、色を選んでください。」となります。
「メリット」
- デザイン(色、柄)の選択肢が広い
- 価格もリーズナブル
- 不燃性(耐火性能)
「デメリット」
- 耐久性に劣る ⇒ サイディング自体は吸水性があるため、塗装されています。この塗装の耐久性が一般的に10年前後のものが多く、定期的に再塗装する必要があります。
- コーキングの打ち換え ⇒ サイディングの隙間をシリコンでコーキングしており、コーキングの耐久性が10年前後であるため、これも定期的に打ち換える必要があります。
- 窯業系サイディングは水分を吸収しやすいため、凍害(とうがい)と呼ばれる劣化現象が起こります(窯業系サイディングに吸収された水分が、寒さで凍ったり溶けたりを繰り返すことによって、窯業系サイディングが割れてしまう現象、寒い地域で起こりやすい)。
- 2階建ての場合、これらのメンテナンスに足場を組む必要があり、かなりの出費となります。塗り換えとコーキング打ち換えで、100万円前後の出費となると思われます。
「金属サイディング(鉄:ガルバリウム鋼板))」
ガルバリウム鋼板は比較的耐久性の高い外壁材と言われていますが、メンテナンスフリーではありません。また同じガルバリウム鋼板でも、メーカーやグレードにより耐久性の保証期間が異なります。この点は留意が必要かと思います。
「メリット」
- 比較的、耐久性がある(錆に強い)
- 軽いので、耐震性の面で有利
- 耐熱性が高いため、外壁材のひび割れ等が起こりにくい。
- デザインが豊富
「デメリット」
- (イニシャルコストが若干高め)
- 施工業者を選ぶ ⇒ 板金工事業者に限られる
- 自体の断熱性能は無い
- 塩害地域では耐久性が下がる
- キズが付くとサビが発生する
- 年に1回、水道水で洗浄が必要(メンテナンス サビ防止のため)⇒ただし、高圧洗浄機は不可
- 継ぎ目にシリコンコーキング施工されているため、シリコンの定期的な打ち換えが必要、但し直接外に面していない所にコーキングするため、窯業系サイディングのコーキングより劣化しにくい ⇒ この点を説明しているサイトが少ない
- 元々、めっき塗装されているため、再塗装が難しく、業者を選ぶ必要がある。
- 素材が金属なので通気性が無く湿度を通さない。隙間なく施工すれば湿気が壁内にこもるので注意が必要
「金属サイディング(アルミニウム)」
基本的な特徴は、同じ金属であるガルバリウム鋼板と同じです。
耐久性はアルミニムムの方が上になります。但し、金額もアルミニウムサイディングの方が高価なようです。
アルミニウムの地金も種類があり、3000番台、5000番台等のものがありますが、5000番台の方が性能(耐久性)、価格が上になります。採用される場合は、この辺も踏まえて選択してください。
「樹脂サイディング(ポリマパネル)」
北米では高いシェアを誇る外壁材ですが、国内では殆ど見かけることが無い外壁材です。
その最大の特徴は、メンテナンス費用が抑えられるということです。この最も大きな理由は、「シリコンコーキングが不要」である事。シリコンコーキングをしないので、打ち換えのメンテナンスが不要となります。ほぼメンテナンスフリーに近い外壁材です。
「メリット」
- メンテナンス費用が少ない(シリコンコーキング不要)
- 軽いので耐震面で有利
- ポリマパネル自体に顔料が練り込まれており、色褪せが少ない。
「デメリット」
- 色、デザインの選択肢が少ない、及び単調なデザインとなる
- 施工できる業者が限られる
- (価格は窯業系サイディングよりは若干高い)
- 再塗装は出来ない
- プラスチック製なので割れる可能性がある ⇒ そんなに簡単には割れません
- 元々、供給会社が2社あったが(日本ゼオン、信越ポリマー)、信越ポリマーは撤退したため、現在は供給が1社のみ。
「木質系サイディング」
木の外壁です。質感と風合いは馴染みやすいものだと思います。
「メリット」
- 木材の持つ独特の風合い。経年により変化する色合いも一種の味わいとなる
- 断熱性が高い
「デメリット」
- 価格が高い傾向にある。上質な木材を使用した場合は、さらに高価となる
- 防火性能が低い
- 雨水が染み込むと腐食しやすいため、腐食防止のため3~10年に1度、塗装を行う必要がある。
- 対応している業者が少ない
「焼杉」
焼杉は、杉板の表面を焼いて炭化させた板の外壁材です。もう見たまんまの黒い外壁材となります。元々、西日本では一般的な外壁材だったようですが、東日本では珍しい外壁材のようです。
「メリット」
- 黒い色の風合い(単調なのでデメリットと捉える場合もあるが…)
- ほぼメンテナンスフリー メンテナンスコストがかからない
- (日本古来の外壁材の1つです)
- 耐久性が高い。30年から50年は持つと言われている。杉の炭化層が厚いほど耐久性が高くなる。
「デメリット」
- 耐火性能は劣る(下地に防火性の高いものを使う等)
- 触ると手が黒くなる
- 色の選択肢は無く、黒のみ
- 初期費用は窯業系サイディングよりは高い。⇒ メンテナンス費用が殆どかからないので、長期間で見れば安い
「塗り壁:漆喰(しっくい)」
姫路城の白い壁が漆喰です。日本でも海外でも、昔から使われてきた外壁材となります。主成分は水酸化カルシウム、炭酸カルシウムにて、耐久性は100年以上と言われています。但しメンテナンスは必要です。
漆喰にも種類があるようです(本漆喰、メーカー調合漆喰、土佐漆喰、琉球漆喰、西洋漆喰等)、採用される場合には、ご留意ください。
漆喰壁は、モルタルの上に漆喰を塗りつけて造るので、まずはモルタルを下地として施工する必要があります。
メンテナンスについては、定期的に何かする というよりは普段から状態を観察するようにしておき、キズや汚れに早めに対処する ということなのだろうと思います(メンテナンスの具体的な記述があるサイトが殆どない)。
「メリット」
- 見た目の美しさ
- 防火性が高い
- 左官職人の手仕上げのため、ならではの味わいがあり、その家のみの風合いとなる
「デメリット」
- キズがつきやすい ひび割れがおこりやすい ⇒ 補修は可能
- 汚れが目立ちやすい
- 施工できる左官職人が少ない
- 工期が長く、施工費用も高めとなる
「塗り壁」
塗り壁は、モルタルを下地として塗装をしたり模様付けしたりする工法となっています。
(サイディングは、金属や窯業系のパネルを外壁にはりつけていく施工方法)
「メリット」
- 手仕上げのため、その家独自の仕上がりとなる。
- 防火性に優れている
「デメリット」
- 手作業のため工期が長くなり、人件費、工事費用が高めとなる
- ひび割れが起こりやすい ⇒ 最近ではひびの入りにくい伸縮性のある素材がある
- デザインや耐久性の質が職人の力量に左右される
- 10~15年毎にメンテナンス(塗り直し)が必要となる
「タイル」
タイルの外壁は、見た目にも分かりやすく、高級感があります。
イメージ的にはメンテナンスフリーと思われるかも知れませんが、メンテナンスは必要となっています。タイルには外壁に加わる衝撃を緩和させる伸縮目地と呼ばれる部分にコーキングが施されているため、コーキングの劣化に伴う打ち換えが必要となっています。
「メリット」
- タイルの色、デザインの選択肢が豊富
- 汚れが付きにくい
- 耐久性が高い
- 耐火性に優れる
「デメリット」
- メンテナンス費用は少なめ(目地コーコングの打ち換え)
- 職人の腕に品質が左右される
- 初期費用が高い(窯業系サイディングの倍)
「ALC」
ALCは軽量発泡鉄筋コンクリートの板材で、工場で作られます。中に気泡を多く含むため、軽量化され断熱性も高くなっています。木造家屋の外壁に使用されるALCの厚みは37mとのこと。
「メリット」
- 高耐久性
- 断熱性、遮音性、防火性が高い
「デメリット」
- 外観が無骨(デザインの種類は少ない)
- イニシャルコストが高い
- 表面強度は強くないため、キズ、欠けの発生がある
- 自体は吸水性がある ⇒ メンテナンスとして定期的な塗装が必要となる
ここに記載した以外にも、幾つかの外壁材があります。
外壁選びは難しいからこそ、幅広い情報の中から、最良の選択をして欲しいと思います。
「個人的な考えですが…」
他の記事にも書きましたが、私は悩んだ末に樹脂サイディングの外壁を選びました。理由はメンテナンス費用が抑えられる(と見込んでいる)からです。
家を新築で建てる場合、その家に何年住むことになるのか? 30代で家を建てた場合には50年ほど住む計算となります。であれば家の新築費用に加え、50年間のメンテナンス費用も踏まえて、家の設計を考えるべきだと思います。
家の外壁は、最もメンテナンスがかかる部分であり、その選択により、費用に大きな差が出ます。初期費用が安くてもメンテナンス費用が高ければ、トータルコストは大きくなります。及びメンテナンスの都度発生する手間もあります。
窯業系サイディングのメーカーや業界団体のHPには、メンテナンスの頻度や内容については、きちんと説明されています。その上で、私自身は、10年、15年毎に塗装、コーキングの打ち換え等を行わなければならない事に疑問を感じます。これは大きなデメリットだと思うから。現在、窯業系サイディングのシェアは75%前後ですが、選択される方は本当にこのデメリットを理解しているのだろうか? と疑問に思うのです。
最初にも書きましたが、外壁選びは家づくりにおいて、本当に難しい課題だと思います。だからこそ、自分なりにきちんと調べて、最良の選択をして欲しいと思います。少なくとも、「工務店標準だから」と何も考えずに色とデザインだけ決めて、後から後悔することのないようにしてほしいと思っています。
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