家づくりにおいて、最も選択が難しいのは外壁選びではないかと私は思います。私の家の外壁はポリマパネル(樹脂サイディング)です。なぜポリマパネルを選んだのか? その特徴等について、私の知っている範囲になりますが、ここでご説明したいと思います。
「ポリマパネル-樹脂サイディング」
- 樹脂サイディングは、北米(アメリカ、カナダ)では主流の外壁材となっているようです。国内では従前、2社(ゼオン化成㈱、信越ポリマー㈱)が取り扱っていましたが、信越ポリマーは2015年に撤退し、現在ではゼオン化成1社のみが販売しています。
- 従前は確か、両者共にポリマパネルの名称で販売していたように思います。及び、ポリマパネル工業会だったかの業界団体もあり、HPが存在していたように記憶していますが(そこに詳しい解説記事があった)、信越ポリマーの撤退に伴い、工業会自体の存在理由もなくなり、現在はHPも存在していないようです。これに伴い、ポリマパネルの名称使用を止めたのではないか? と推察しています。
- 現在は、ゼオン化成が1社で販売されているので、樹脂サイディングの名称で販売し、塩ビ工業・環境協会のHPに紹介記事が記載されています。私はポリマパネルの名称の方に馴染みがありますが、ここでは樹脂サイディングの名称にて記載します。
- 樹脂サイディングのメリット、デメリットについては、他に詳しいサイトが幾つかあります。なので、実際に使用している私の感想も少し付け加えて説明します。
「樹脂サイディングのメリット」
- (最大のメリットは)外壁施工に際し、シリコンコーキングが不要であるということです。私はこれが最大のメリットと思い、樹脂サイディングを選択しました。窯業系サイディングの場合は、シリコンコーキングが必要となりますが、シリコンは10年前後で経年劣化するため、打ち換えが必要となります。樹脂サイディングはこのシリコンコーキングの打ち換えが無いため、ランニングコストを低く抑えられるメリットがあります。
- 色落ちしにくい。耐久性が高い(と説明されている)。長いもので30年保証。
- 隙間が空いているため、壁内の通気性が確保される。
- 壁に引っ掛けて固定してあるだけなので、破損したら1枚から交換可能(らしい)。
- 重量が軽いため、荷重面での家への負担が少ない。
- 初期費用は窯業系サイディングに比較すると若干高いが、ランニングコストが低いため、長期間で見るとコストが低い(とのこと)。
- 耐凍結性:吸水性が無いため凍結破損の可能性が殆どない。これは寒冷地の家においてはメリットとなるようです。
- 塩害に強い:樹脂サイディング自体はプラスチックなので塩の影響を受けず、金属系サイディングのような塩害の影響がありません。
「樹脂サイディングのデメリット」
- 色の種類が少ない。ゼオン化成HPには12種類の色が紹介されている。デザイン的には恐らく1種類なので、窯業系サイディングに比べると、圧倒的に色、デザインの選択肢が少ない。
- 温度差による伸び縮みが少しある。施工時にこの点を踏まえた施工をしていないと、夏季にたわむ等の不具合がある。
- 破損しやすい。というか薄いプラスチック板なので、硬い物で強打すると割れる。但し、これは他のサイディグや外壁でも、変形、破損に至るのは同じかもしれない。但し、弾力性のある樹脂(プラスチック)なので、それほど簡単には割れずに弾性変形はします。
- 上塗り塗装が出来ない:プラスチックなので塗装をはじくため、塗料がのらず、塗装は出来ません。
「樹脂サイディングのデメリット(個人的な見解)」
- 「比較的施工が簡単なので、材料があれば施工してくれる業者が多い」と書かれているHPもある。確かに、私が商談した4社は、いずれも樹脂サイディングを取り扱った経験は無いとの事だが施工は可能との回答でした。
- しかしながら、樹脂サイディングを専門的に施工している業者のHPの見解としては、押さるべきポイントが幾つかあり、簡単というわけではないと説明されています。
- 事実、私の家の樹脂サイディングは、実は2枚ほど剥がれてしまいました… もちろん施工された工務店に依頼し補修してもらいましたが… 本来の補修方法ではなく、シリコン充填剤で接着させて補修しています。つまり、施工自体も専門性がある程度求められるので、相当腕の良い職人でない限り、臨機応変、自在に樹脂サイディングを施工対応するのは、現実的には難しいだろうと予想します。つまりは施工してくれる業者が誰でも良いわけではないという状況があります。
- また、「1枚から補修が可能」となっています。確かにそうかも知れませんが、1枚だけ販売してくれるの? 最小ロットは恐らく箱に10枚とか一定単位のような気がする。仮に1枚単位で販売してくれたとしても、結構な長尺寸法なので梱包、送料がかなりかかる。加えて補修費用がかかるので、以外と1枚の補修としても数万単位では補修費用がかかると予想します。⇒ 私は、この辺を見込んで、家を建て終わった後に余ったサイディングを、一通りの種類ずつビニールシートに巻いて外に保管はしています。
- 何より、西日本での施工件数が圧倒的に少なく、情報が無い。仮に家を建ててくれた工務店が廃業した場合、どこに補修依頼すれば良いのやら… ⇒ 取り扱い自体は止めましたが、信越ポリマーに問い合わせることで、従前扱っていた施工業者を教えてくれる可能性はありますが… 可能性の話でしかありません。
- 樹脂サイディングは壁に密着していないので、サイディングの直下は通気性を維持した状態となっています。他方、壁内通気工法については、恐らく内壁と外壁の間を通気させる工法にて、これで結露を防ぐのを目的とした工法となっています。しかし樹脂サイディングは、下地として構造用合板を家全面に打ち付けているので、内壁と外壁の間の通気性については確保できないこととなります。
- 「耐久性に優れる」:とのことですが、周りに事例が無いので私の自宅が実験台…
「樹脂サイディングのメリット(個人的な見解)」
- 別の記事にも記載しましたが、樹脂サイディングの施工方法として、外側全面に構造用合板を柱に打ち付けるため、軸組工法+壁式工法の強度が期待できます。つまり耐震性については、木造軸組み工法よりも強化されている状態となります。
「樹脂サイディングについてどう思うか?」
- まさか私が家を建てた翌年に、信越ポリマーがポリマパネル(樹脂サイディング)の取り扱いを注意するとは思わなんだ… いやはや、参りました…
- これで、ゼオン化成まで取り扱いを中止したらと思うと… ぞっとする。
- おまけに、周りに樹脂サイディングの家なんて見当たらないぞ…
- と言って、特に不安があるわけではなく、もう、なるようにしかならないからねえ… 今の所、最初の夏に少したるんでいるような状態を見かけたのですが、その後の夏は特に異常は無く、2枚剥がれた以外の異常もなく。
- 本当は、周りの家が樹脂サイディングを多く採用してくれれば、施工技術も向上するし、メンテナンス性も向上が期待できるので、そうなったら嬉しいのですが、期待できない…
- 私自身は、樹脂サイディングを選択したこと自体は後悔していません。しかし、無条件にお勧め出来ないのが実情です。ただ、樹脂サイディングの施工技術を持つ工務店なり外壁専業業者があるのであれば、選択肢として入れるのは、有りだと思います。そこに信頼できる施工業者さえあれば、樹脂サイディングは外壁材として、かなりお勧めなものだとは思います。
「樹脂サイディング自体について」
- 自宅の建築途中で何度か状況確認に行った際、取り付け前後の樹脂サイディングの入っていた箱を見ました。最初は信越ポリマーのラベルしか目に入りませんでしたが、確か家の施工も終了し、あまった樹脂サイディングを一部保管しておこうと作業をしていた際、箱の表面には英語の文字が記載されていました(残念ながら画像を撮っていない)。
- 恐らく、信越ポリマーの樹脂サイディングについては、自社製品ではなく、北米からの輸入品ではないか? と思います。
- また、当時の信越ポリマーのカタログにあった樹脂サイディングと、ゼオン化成のHPにある樹脂サイディングについては、なんか似ていたんですね。もしかして、元は同じもの? ではないかと思っていました。つまりは両社共に同じ北米のメーカーから輸入し販売していたのではないかと推察しています。
- 通常、自社でものを製造する場合には、製造ラインを作るための莫大な設備投資が必要となります。北米で主流とは言え、国内では全く認知されていなかった樹脂サイディングを事業展開するに際し、作ってまで販売しようとは、さすがにリスクが大きいのではないか? なので最初は輸入販売から始めたはずです。なので、信越ポリマーもゼオン化成も、同じ輸入品を扱っていたのではないか? という勝手な想像をしています。
- まあ、この辺のことは直接尋ねてみれば、教えてくれる可能性もありますが、それを聞いたところで何も変わらないので、聞いてはいません。
- 私個人的には、樹脂サイディングを採用する工務店が増えれば良いなあと思うのですが、もはや夢でしかなさそうです… 残念でなりません。
「外壁工事におけるシリコンコーキング」
- シリコン樹脂を外壁目地や隙間へ充填する作業をシーリングあるいはコーキングと言います。
- コーキング自体は、水回りに多用されており、隙間を埋めて水の侵入を防止するのが、その目的となっています。キッチンの隙間、洗面台の隙間、ユニットバスの隙間に充填されているのがシリコン樹脂です。
- シリコン樹脂の特徴としては、①比較的安価、②作業性が良い、③比較的耐久性がある、④ゲル状に固まり、柔軟性があるので充填後に隙間が出来にくい、⑤耐水性が高い ということが挙げられます。このため、あらゆる所に多用されています。
- 窯業系サイディングや幾つかの外壁材は、隙間を持たせて施工します。これは樹脂サイディングと同様、気温により若干の伸び縮みがあるため、隙間を詰めて施工が出来ないことによります。この隙間を埋めないと水が浸入するため、シリコンコーキングを行います。
- シリコンはゲル状で固まるため、窯業系サイディングのわずかな伸び縮みがあっても、クッション作用で吸収し、水の侵入を防ぐ役割があります。
- このように外壁工事においてはシリコン樹脂の役目は重要となっています。比較的耐久性が高いのですが、さすがに気温差、雨、紫外線等の影響があるため、10年前後でシリコン樹脂が劣化するため、この打ち換えがどうしても必要となっています。
- 2階建ての場合、足場を組んでシリコンの打ち換えを行う必要があるため、それなりの費用が発生します。平屋の場合は脚立で作業可能なので、足場不要の分、費用は安く抑えられます。
- 樹脂サイディングにおいては、このシリコンコーキングが不要という特徴があるため、維持費が安く抑えられるメリットがあります。
「外壁選びの難しさ」
- 家の外回りは太陽の光(紫外線)、寒暖差、雨風にさらされるため、耐久性に影響が出ます。現状、安価で長期間の耐久性(維持費がかからないもの)が維持できる外壁材は無いというのが実情です。このため、どの外壁材を選ぶのか? 家づくりにおいては重要なポイントの1つではないかと思います。
- 簡単に、幾つかの外壁材についてメリットとデメリットを書いてみます。
「タイル」
メリット:耐久性に優れる、見た目も良い
デメリット:費用が高い
「窯業系サイディング」
メリット:見た目が良い、耐火性に優れる、(現在の主流)
デメリット:維持費がかかる(シリコンコーキング必要)
「金属系サイディング」
メリット:軽量にて耐震面で良い、断熱材入りは断熱性を上げる
デメリット:維持費がかかる(シリコンコーキング必要)
「塗り壁」
メリット:風合いが良く種類が多い。職人施工により同じものが2つ無い。
デメリット:割れる場合がある、塗り替え等の維持が必要、職人による品質差がある
「塗り壁(漆喰)」
メリット:見た目が良い、耐久性に優れる
デメリット:施工できる職人が少なく職人による品質差がある、傷が付きやすい、工期がかかり費用が高い
「樹脂サイディング」
メリット:耐久性に優れる、軽量にて耐震面で良い
デメリット:施工できる業者が限られる、売れていない事より、今後のアフターサービスに不安あり。
- 外壁は慎重に選ぶ必要がある家の構造物なので、ぜひ詳しいサイトにて、良く調べてから選ばれて下さい。
- 樹脂サイディング自体は、初期費用は安価ではありませんが、それほど高価でもなく、耐久性の面でも優れていると思うのですが、施工面のデメリットがあり、私も無条件にお勧め出来ないのが辛い所ですね…
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