書籍紹介

「買ってはいけない住宅」(書籍紹介)

書籍紹介
  • 発行所 株式会社アスコム(定価 1,238円)
  • 著者  加治将一(「借りたカネは返すな!」の筆者)

筆者は小説家でもあり、建築デザイン、工務店、不動産投資の経験からの独自の観点から書かれた本です。読み物としても堅苦しくなく面白い本でした。

この本の中で、参考になりそうな箇所を幾つかピックアップしてご紹介したいと思います。

「ローンを組む時のポイント」

  1. ローンの額を支払い可能額ギリギリにしないこと。勤務先の倒産、金利上昇で支払い不可能となる。借入金額は年収の3倍以内が安全圏。それで家が買えないなら、すっぱりとあきらめる事。無理して家を買うことが素晴らしい人生とは限らない。
  2. ボーナス併用ローンは避ける。景気によりボーナスの額が激減すると、月の負担が対処不能となるくらい大きくなる。ボーナスを当てにしないローンが無難。
  3. 退職金を返済に充当しない。

「検査は野放し」

  • 日本という国が救い難いと思ったのは、人の命に関わる家屋建築の工程で、なんら検査が入らないという現状。いくら建築基準法を厳しくしようとも、守るかどうかは業者任せ…
  • アメリカでは、建築中に多数回の検査があり、合格しないと次の工程に進めない。検査は公務員。
  • (私(マサゲン)も自宅の建築検査に立ち会いましたが、金物が適正に入っているかの検査だけでした… 十分な検査とはほど遠いように思います)
(実際にはほとんど検査はありません)

「建売か注文か? の落とし穴」

  • 「建売」は、安普請(意味:安い費用で家を建てること。また、そういう粗雑なつくりの家)が多い。建売は、見てくれと安さが勝負であり、ウリは周辺環境。建売は盛沢山の期待を込めず、とりあえず構造さえしっかりしていればヨシとする気概で選ぶこと。
  • 「建築条件付き」は注文住宅にあらず! 「建築条件付き」とは、土地と建物施工会社がワンセットになっているやつ。これは危険な落とし穴がある。それは時間。建築条件付きの場合、土地の売買契約後、3ヵ月後くらいまでに家の建築契約を済ませなければならないという条項を含む場合が多い。3か月は非常に短い、殆ど打合せが出来ないまま時が過ぎたらどうなるか? 結局大雑把な図面だけで契約するハメになる。
(落とし穴…)

「プレハブ住宅は安くない!」

  • 「プレハブ=プレ・ファブリケイティッド」の略で、「前もって組み立てている」という意味です。プレハブ住宅は英米では目にしたことが無い。
  • (戦後の復興時期、庶民に手が届く値段で、工場で量産し施工時間も短いプレハブは、時代のニーズに合い、販売数を伸ばした経緯がある模様)
  • しかし、その役割は終わった。なぜなら「安くないから」。プレハブ住宅は今や手作りの家、注文住宅と変わらない値段(現実的には高価帯となる)になり、所期の志はとうに消えている。
  • 普通、量産品というのは安いから買うもの。高けりゃ大量生産の意味が無い。もちろんメーカーもコストダウンに血道をあげているが、無理な話。大衆的なものが良くないという意味ではなく、安売りできない大衆品などくだらない。
  • S社のセールスマンが、「プレハブではない、うちのはユニット工法だ」と説明していたが… どこが違うのか? 工場で量産するならやすくならなければならない。そういった金額に見合った家が建たないのは、住宅展示場やコマーシャル、膨大な営業費にコストを掛けすぎているのも大きな原因。
  • 大手のやっていることは、どう考えてもおかしい。60年、70年と長持ちする家づくり、安全で省エネを目指したセンスある家をもっとまじめに提供すべき。
(プレハブ住宅は高価なのです!)

「お年寄りが快適ならみんなが快適」

  • お年寄りが難儀だと感じるものは、何でも取り除くのが家づくりの基本。段差はできるだけなくします。風呂も傾斜を付ける工夫があれば、入り口の段差などを消すことが出来る。玄関の「上がりかまち」も不要。段差にこだわる必要はない。
  • 年齢と共にトイレに行く回数は多くなるので、寝室とトイレは隣接した方が良い。高齢者には平面移動だけで生活できるようにしてあげるのが良い。玄関脇のトイレはダメ。寒くて遠いのは危ない。
  • 廊下は幅120cmあると車いすの移動もゆとりが出る。
  • 年よりは和室 はナンセンス。布団の上げ下げが大変。洋室にベットの方が過ごしやすい。
  • バスルームと台所のフロアには滑らない素材。
(年配者にやさしい家は住みやすい家)

「玄関・廊下=ムダという新発想」

  • 家の間取り、狭いなら狭いなりに間の取り方がある。ムダを削り、他を大きく取る。例えば日本人特有の中廊下などはきっぱり捨てて、その分を各部屋に割り振る。
  • 年に何度も来ない客のために客間なんかいらない。遊ばせておくだけの書斎ならいらない。その分、リビングや各自の部屋を広くする。
  • どうしても日本人が作ってしまう玄関、狭い家に玄関はムダ。玄関なんて滞在時間はほんの数十秒、それなのに2畳、3畳、4畳という貴重な空間を専有する。
  • デザイン(間取り)等は先入観を外して、もっとのびのびと図面に挑むべき。
(先入観を外して!)

「設計変更の落とし穴」

  • 住宅業者(大手)の歯の浮くようなキャッチフレーズは数々あれど、業者の本音は、いかに経費を削り利を厚くするか? そのための手っ取り早い方法は下請けを叩くこと。叩かれた下請けは、さらに下請けを叩く。全く効率が悪い。通信、自動車などは外国との競争にあけくれてきたが、建築、土木という業種は外国の挑戦を受けていないため、極めて非効率的なシステムを温存してきた感がある。
  • アメリカで家を建てると、建築コストは坪30万円も出せば立派なものが建つ。しかし日本では同じグレードの家を建てると、坪80万円になる。一時、それが問題になったこともあるが、「日本は地震国だから」「建築基準法」「安全性」「日本独自の技術だから」等、10社くらいの工務店に言われると、コロっと大人しくなる… 業者としてはやりやすい。アメリカでは、「家」というものの知識がもっと素人の中に蓄積されていて、そんなごまかしはきかなかった。
  • 現場で働く職人にとって、仕事をくれた相手は、目の前にいる建て主ではなく、大手元請け。なので、「聞いていた話と違う」という場合が発生しても、職人は「元請けに指示された通りにやっている。」と言われるのがおち。とにかく「話が違う」というのが目につく。それも道理で、客がそれまで相手にしていたのは、現場とは関係の無い人たち。営業マンだったり大手メーカー本社の人間だったり。現場との距離が遠すぎて、声が届かない。こういう局面では責任の所在がうやむやのうちに強引に工事が勧められ既成事実で埋められる。そしてだいたい客が押し切られるか、さもなくば追加請求を取られるか。この金額がまた高い!

「モデルハウスと無縁の工務店を探せ」

  • どうして日本人は展示場にこだわる? 日本にはホームパーティが少ないから他人の家を見る機会が少ないから? 日本人の家の建築のスタートはまず、モデルハウスの見学なのです。
  • 家の新築にはまず展示場の見学から と閃く? そしてモデルハウス巡礼の旅が始まり、重いカタログを持ち帰る。その結果、だいたいが歩き疲れてそこの業者と契約を交わし、サービスとして図面を引いてもらうので、設計料はタダになります。
  • ここで良く考えて頂きたいのは、モデルハウスは建築業者が腕によりをかけて作り上げた、文字通りの“モデル”であって、これから建てる自分の家とはほとんど関係がないということを忘れてはいけない。
  • さらにモデルハウスという大掛かりな舞台仕掛けについて。モデルハウスを全国津々浦々に建てまくり、それを維持し、営業所を網羅して、上質カラーカタログを小脇に抱えた営業マンを走らせる。とどめは新聞、テレビの広告。では問題ですが、これらの運営にかかる気の遠くなるような経費はいったい誰が負担しているの?
  • 言うまでも無く、これらの費用は全て客のフトコロから出ている。自分の出した数百万円単位の金が自分の家に使われずに営業経費という赤の他人である客獲得のための仕掛けに消えていくのです。コツコツと貯めた虎の子が、なんとコマーシャルに使われている!
(コマーシャルに消えていく…)

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