書籍紹介

「「いい家」が欲しい!」(書籍紹介)

書籍紹介

「「いい家」がほしい」 創英社・三省堂書店 松井修三 著

  • 初版発行:平成11年(1999年)
  • 私が拝読したのは、平成14年第5版です。
  • 著者は、「マツミハウジング㈱」という会社(工務店)を創業、木造軸組み工法の注文住宅を専門に建てられている方です。建て主にとって“いい家”とは何かを定義付けされ、そのために工務店がすべきこと、いい家を建てるのに必要な事は何かを考え、真剣に家造りと向き合われている方というのが分かる本だと思います。
  • 国内における家造りの現状、問題点について本の中で幾つも提言されており、参考になります。

「著者の考え・主張」

  • 快適な住み心地こそた住宅の根源的な価値。
  • 快適な住み心地、安全に長持ちする家造りの最善の方法は、木造軸組み工法で外断熱にすること。⇒外断熱にすることにより、高気密、高断熱の家造りが可能
  • 良心的なつくり手が作る家には値引きはあり得ない。本物の高性能・健康住宅を作るのであれば、坪当たり70万円台以下では全国どこに行っても無理。
  • 筆者の考えに賛同し、同様の工法で家を建ててくれる会員企業(工務店)が全国にあり、その情報を発信するためホームページを作っている。

「参考になった内容」

1. 正直な家造りとは

家造りに携わる者が、絶対に追ってはならないものがあるのです。それはエリアと数の拡大です。エリアが拡大し、作る数は増えるにつれて正直さは薄れていく、すなわち住む人にとって都合が悪い事を選択するようになっていくということは、紛れもない事実です。

現場が四方八方に散在していて車で1時間以上もかかるようでは、経営者の目が行き届かなくなり、間に合わせの大工、職人を使うことにもなって、仕事が雑になりがちです。現場監理が疎かになり、完成してからのアフターケアも面倒になってしまうものです。

それでも勢いに乗って拡大を続けていくと、どうしても「安く、早く、簡単に」作るために役立つ工法と人手を選択して、より多く儲けることを追求することになってしまうのです。

そしてカタログが豪華になり、営業マンが増え、住宅展示場に進出するようになったら「正直な工務店」という看板は下ろさなければなりません… 住む人の幸せは、二の次、三の次となり、受注合戦に勝つことだけが目的になってしまうからです。したがって、工務店はエリアと数を制限しなければならないのです。

2. 外断熱の利点(木造軸組み工法における)

  • 内断熱(グラスウール、ロックウール)は壁の中に断熱材を詰め込んでいくので、隅々まで気密が高まるように隙間なく詰め込むことは不可能。これに対し外断熱の場合、気密との両立を前提にしている。
  • 床下、壁内部、屋根裏に結露が生ずるような温度差が出来ない。断熱材そのものが水や湿気に強いので防湿層を設ける必要がない。

3. 窓へのこだわり

  • 冬の場合、家全体の熱損失の半分近くが窓からとなる。窓の性能を良くすることが快適な暖かさの維持と省エネのために絶対に必要。
  • 窓からの熱損失を抑えるためには、アルミサッシではなくペアガラスの樹脂サッシが良い。樹脂はアルミの千倍以上熱伝導率が小さい。

4. 床暖房

  • 長年足元の冷える家に住んでいた人にとって、床暖房はあこがれの暖房方法。また作る側にしてもお客さんの関心を引きやすく、比較的満足感を与えやすい暖房方法。
  • 床暖房が家の中を暖かく出来るのは外気温+10℃前後。外が氷点下に下がると、室温は12°~13℃ぐらいにしか上がらない。
  • 足の裏は身体全体の表面積のわずか8%にしか過ぎないが、足の裏が床から感じ取る温度により人の快感が大きく左右される。また、足というのはわがままなもので、いったん暖まると、冷え性の人でない限り、暖かさの連続を不快に感じる場合もある。

5. 断熱材(セルロースファイバー)

  • 内断熱材として、古紙を主体に製造されたセルロースファイバーという断熱材がある。セルロースファイバーは外壁と内壁の間に充填(吹き込んで)施工する。
  • (「セルロースファイバーは、古紙が主体なので吸湿性に優れている」というのがアピールポイントとして説明されている事が多いようです。)
  • セルロースファイバーは、微粉末が発生、これが壁や窓枠の継ぎ目から室内側に侵入する。機械換気をすると一般的には室内側はわずかに陰圧になる関係上、セルロースファイバー由来のホコリが室内側に入り、若干ほこりっぽくなる場合がある。

6. 依頼先(設計士)

  • 著者はそれまでに60人ほどの設計士の方と知り合ったが、木造住宅の設計が出来る人は極めて少なかった。感受性と想像力と生活体験に乏しく、不勉強で自己満足的な設計士が多い。
  • これまでは設計士は工務店の上にあって、先生と崇められ、批判することはタブーとされていがた、最近では高性能住宅づくりをしている工務店主の多くは、そのような設計士に木造住宅を扱わせるのは間違えていると言う。

7. 依頼先(ハウスメーカー)

  • 「欠陥住宅を正す会」の澤田和也弁護士は、大手ハウスメーカーがつくるものになぜ欠陥が生じるのかという理由について、生産システムそのものに問題があり、契約の受注者と施工者が別であること、不当に低い原価にその原因があると書いている。
  • ハウスメーカーが受注を受け、実際には施工するのは各地にある住宅会社の一括下請け会社のさらに下請け業者(孫請け)の地場工務店である場合が多い。契約の受注者と施工者が分かれるために、施工者に責任観念が生じにくいのも欠陥が生まれやすい原因の1つ。
  • 代金面において、この業界では通常、製造原価は「半値八掛け」と言われている。つまり3,000万円の住宅が、その4割の1,200蔓延で実際に施工するものに渡されている。1,200万円のコストで3,000万円で予定されている商品をつくろうとすれば無理が生じるのも当然。ここにも欠陥が生まれる客観的な原因が潜んでいる。
  • たいがいの人はハウスメーカーが直接工事をして家を建ててくれるものと信じている。実際に工事をしているのは回りまわって全く関係のない街の零細工務店であると知って、まず驚く。そしてその原価が半値八掛け程度であろいうとは想像できなのではないかと思う。3,000万円を払っても、実際には1,800万円ものお金が利益と宣伝広告費、展示場の維持費や営業マンへの報酬に使われ、わずか1,200万円しか家づくりに掛けていない。表現を変えると、1,200万円程度のものを3,000万円の値打ちと思わせて販売しているということになる。
  • 「大量生産販売のシステム」=「安く、早く、簡単に」 工法、構造、材料を簡略化し、工期も出来るだけ短縮する家造りとなる。最初に、より多く儲けるというテーマがあり、そのためには大量生産販売しかないという答えがあり、それに適する工法と資材が選択され、生産-hな倍のための様々な戦略が組まれ、実行されることとなる。その中で一番力を入れているのがイメージ戦略。「メーカーがつくるもの」「多く宣伝している会社」「住宅展示場がある」「豪華なカタログと営業マンが勧めるもの」これらが「いい家である」というイメージを作り上げる事。
  • 新聞、テレビ、雑誌、有名人を使い毎日のようにPRし、展示場は内外を飾り立て、最高の雰囲気を作ってイメージの普及、強化に努める。このように大量生産販売の家造りが優れていて、ユーザーの利益になるという信仰に近いようなイメージを確立した例は、世界で日本だけです。
  • 住宅先進国と言われる北米やヨーロッパでは、家を大量生産するという考えは見当たらず、年間10~30棟程度を作る地元のビルダーが親切丁寧に、正直に造っている。カナダでビルダーの方に、年間100~10,000棟くらい造るメーカーが日本にはあると話したら、「それはクレイジーだ! そんなに造って、どうやって信頼を維持していことが出来るのか?」という質問を受け、私は大変なショックを受けた。日本では大量に作ることが信頼される要因であるのだが、そうすることが逆に信頼を失うことだとする人々との、本質的な考え方の違いを思い知らされた。「一番売れているものがいちばんいいものである。」という市場経済の原則は、住宅には当てはまらないものであるにも関わらず、各メーカーはそこに固執し、とめどない量産競争を続けている。

8. 鉄骨系プレハブの本質

  • もともとは倉庫用に作られていたものを住宅用に転用することに成功した鉄骨系プレハブの構造を観察すると、問題点が分かる。そもそも構造体は熱を伝えやすい鉄骨を使っており、断熱性能という点からは失格の家造り。
  • 問題なのはその構造の無理さにある。それは鉄と木とグラスウール断熱材を組み合わせているため、断熱は不連続で結露を生じやすく、その被害に気付きにくい構造であり、木造にとっては最悪の組み合わせとなり、先に弱ってしまうことは明確。欠陥と言えるような腐れによる被害が多発しているにもかかわらず、その欠点は改善されていない。
  • 鉄板に木を固定するためにクギかビスを使うので、鉄板はそれらが貫通しやすくなければならないので薄くなっている。つまり2~3mmの厚みしかない薄い鉄板にクギかビス打ちで木材を固定するわけで、家を長持ちさせるという考えがあればとてもできないやり方。
  • この2点を観察すると、この工法は人が住むためのものなのかを問い質したくなるほどに一方的に作る側の都合を優先している。鉄骨の強度はコンピューターで計算されているから万全であり、さびにくい塗装をしているから長持ちする、軽量コンクリートは遮音性に優れ、外装のサイディングはメンテナンスフリーで火事に強いと豪華なカタログでは説明してある。しかし、そこに不可欠のものとして使われている木材については何も触れられていない。鉄と木と綿(グラスウール)の組み合わせが住む人にとっていつまでも都合のよいものであり続けられるか否か? 少し想像力を働かせてみればすぐにわかるのではなかろうか。

9. 工務店に依頼すべきか?

  • 工務店に依頼する場合には、じっくりと評判を聞き集め、自分の目で確かめる事。目当ての工務店があったら、実際に出向いて観察することが必要。現場の整理整頓、出入りの人の表情や挨拶の仕方、車の置き方。あるいは店舗の様子についても、掃除が行き届いているか等。最初の商談時には、出向いて店を訪ねる事が大事。そうすることで経営者の姿勢や気配りが分かる。
  • 家造りが成功するかどうかは、住み手と作り手の人格と、感性の相性によって左右される。住み手が家を作り最中、住んでからも安心できるのは、作り手の人格と感性を信頼できるから。

「本を読んでの感想」

  • この本も、自分が家を建てる際に勉強のために購入した本です。日本における家造りの現状について書かれており、考え方は非常に参考になりました。
  • また、著者の考える「いい家」に対する考え方についても参考になります。
  • 著者は、「いい家を建てるのはそれなりの費用はかかる」という考え方にて、私個人としては、予算に見合ったいい家の追求というのもあっても良いのではないか? とは思いますが、家造りに対しての考えは人それぞれ違うのであり、いろんな人の考え方の中で、何が自分にとって最良なのか、考える材料にもなりました。

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